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「ポーランド旅行」感想

「ポーランド旅行」  アルフレート・デーブリーン著 岸本雅之 訳

鳥影社 2,400円+税

 初めての土地で、気分が高揚したかと思うと、その次の瞬間心がふさいだりすることがないだろうか。独立したばかりでワサワサしている国ならなおのこと。これは「アレクサンダー広場」の著者、アルフレート・デーブリーンが、1924年にポーランドへ旅したときの見聞記である。
 1924年と言えば、ポーランドが長年のドイツとロシアの支配から脱して独立を果たして6年目、希望そして混乱に満ちていた時期である。「今この国で何が起こっているのか」を見るための旅だった。通りから通りを歩きながらポーランドを「体験」する一方で、民族と国家の関係について考えたりもする。例えば、ロシア教会の打ち壊しについて理解を示すが、それでもその後行った小都市ルブリンで同じことが起こっているのを見て、「組織的に破壊する必要があるのか」と憤慨する。ロシアに虐げられてきたのにもかかわらず、ポーランド人は少数民族であるウクライナ人の自治は認めないことに疑問を覚える。また、デーブリーンは行く先々でドイツ的なものに触れてほっとする反面、興醒めに思ったりもしている。本屋でドイツ語の書籍を見つけて喜ぶが、よく見るとそれが台頭しつつあったナチスに関わるものだと知り愕然とする。
 そしてもう一つ、ユダヤ人としてのルーツを探る旅でもあった。両親の代にベルリンへ出てきて、そこで育った彼にとって、伝統的なユダヤの文化はなじみのあるものではない。彼はカトリック教会を訪れ、「処刑された人」キリストにも惹かれるが、その足でユダヤ人街へ行き、シナゴーグ(ユダヤ教会)でラビ(ユダヤ教の宗教的指導者)の話を聞く。ポーランドにおけるユダヤのコミュニティーがナチスによって滅ぼされた現在、当時を偲ばせる貴重な資料である。

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