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フリードリヒ・グラウザー『狂気の王国』感想

『狂気の王国』フリードリヒ・グラウザー著・種村季弘訳
作品社 定価2,400円+税

ベルン州捜査警察刑事シュトゥーダーのもとに、精神病院の医師から警護してほしいとの要請を受けた。何でも患者の一人が失踪、同時に院長までもが姿を消したというのだ。早速かけつけて捜査に当たるが、院長は死体で発見され、所持金も盗まれていた。さらに容疑者の看護士が自殺を図り、事件はますます謎めいていく。むき出しの無意識の世界、マット(狂人)の支配する王国で繰り広げられる犯罪を相手にシュトゥーダーはいかに立ち向かっていくのか・・・。(作品社ホームページより)

原題は「Matto regiert (Mattoはイタリア語で「狂人」)で、直訳すると「狂人が支配する」となります。
意外な人が犯人でしたが、真相については、何しろ相手は正常ではない者、どこまで本当だか分からない。謎めいたまま・・・。さしもの名刑事も、精神病院という独特の世界では空回りするだけで、振り回されっぱなし。

それに輪をかけて謎めいているのが、精神科医のラードゥナー博士。当時最先端だった精神分析を行う改革派のやり手で、仮面のような微笑を持つ男。一部の患者や看護士から崇められているが、そんなのは意にも介さない。彼の頭にあるのは診療のことだけ。シュトゥーダーを呼んだのは、心理学に並々ならぬ関心があるらしい彼に捜査を任せれば、診療の妨げにならないと思ったから・・・。
事件が一応の決着を見て、シュトゥーダーは病院を去る。別れ際にラードゥナーが自らピアノを伴奏し、夫人にシャンソンを歌わせる幕切れは、なんというか鳥肌が立つような緊迫感。「狂気は伝染する」と、本書の中で誰かが言っていたが、この精神病院という「王国」を支配する「マット」は、実は、ラードゥナーその人なのではないか・・・?

作者のグラウザーは、ギムナジウムを放校処分になったあと、各地を転々としながらさまざまな職業につきました。外人部隊にいたこともあり、このときの経験が作品に生かされています。その間に「シュトゥーダー刑事」シリーズを書いて、一躍有名に。しかしモルヒネと縁が切れずに、精神病院で一生を終えます。作品には作者の生涯がかなり色濃く反映されており、ラードゥナー博士や失踪した院長などにもモデルがいるそうです。

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