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ギュンター・グラス『女ねずみ』感想

『女ねずみ』Die Rättin ギュンター・グラス著
高本研一・依岡隆児訳
文学の冒険シリーズ 国会刊行会 定価2,800円+税

1986年に書かれたグラスの作品を読んでみました。物語の舞台である1984年はねずみ年であり、オーウェルの「1984年」の年でもあります。

作者の夢に現れる女ねずみが、核戦争による人類滅亡後の世界のヴィジョンを語る。
その一方で作者は、死にかけた森をテーマにしたビデオ制作を、オスカル・マツェラートすなわち『ブリキの太鼓』の主人公に持ちかける。(オスカルは今やビデオ制作会社の社長である。)そのビデオにはグリム兄弟およびグリム童話の人物が登場する。
オスカルは、ポーランドにいる祖母アンナ・コリヤイチェクの107回目の誕生会に行き、世界中に散らばった一族の者たちと祖母の誕生日を祝う。
汚染の進むバルト海に、女5人の乗った船がくらげの調査に乗り出す。しかし本当は、彼女たちはひらめの助けを借りながら、水没した伝説の都市ヴィネータを探している。
そしてハーメルンのネズミとりの伝説やリューベックの贋作裁判、東西ドイツという「贋作国家」について、これらが同時並行で語られる。

まー、しっちゃかめっちゃかもいいところ。
現代によみがえるグリム童話、ハーメルンのネズミとり伝説についての過激すぎる仮説、人類滅亡後に現れた、「ねずみ人間」の興亡・・・。

船に乗った女たちについては、『箱型カメラ』で種明かしされていましたが、グラスが関わった女たち(奥さんや愛人)なんですね。巻毛の女船長ダムロカが2番目の奥さんで、だとか、臆面もなくよくやるな~。

核戦争で人類滅亡後、ねずみだけは生き残る。ダンツィヒの街を埋め尽くすねずみ。市庁舎やネプチューンの泉、聖マリア教会、みんな行ったばっかりだよ・・・。

「ねずみ人間」の描写が変に細かくてグロテスク。金髪碧眼で、ねずみの頭部と人間の体を持っているとか・・・。

リューベックでは、1950年代に、聖マリア教会や聖霊病院の修復された壁画が、実は画家マルスカートが当時の様式そのものの筆致で描いたものだった、つまり「贋作」だったとして、裁判沙汰になったという事件がありました。しかも、「実は自分が描いたんだ」と言っても専門家すらも信じてくれないから、画家本人が自分を相手取って起訴したという・・・。その絵はもう洗い流されてしまったそうですが、行く前にこの本を読んでいたら、リューベックの街をもっと楽しめただろうな、と思いましたよ。

女ねずみ (文学の冒険)Book女ねずみ (文学の冒険)

著者:ギュンター・グラス
販売元:国書刊行会
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