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新訳『ブリキの太鼓』感想

『ブリキの太鼓』
ギュンター・グラス 著/池内 紀 訳
河出書房新社 定価3,150円

ブリキの太鼓 (池澤夏樹=個人編集世界文学全集2)

「3歳で成長をやめたオスカルは、ブリキの太鼓で身を守り、金切り声でガラスを砕く。ナチス勃興期のダンツィヒを中心に、物語は猛々しくおぞましく滑稽に加速してゆく。」(河出書房新社HPより)

現代ドイツを代表するノーベル賞作家ギュンター・グラスの代表作『ブリキの太鼓』の新訳が出ました。高本研一訳は学生の頃に一度読んだことがあるきりなので、こんな話だったっけ、と思い返しながら読みました。

今は精神病院の住人となったオスカル・マツェラートの回想録という形をとっています。

1920年代、ポーランド人、ドイツ人、カシューブ人などが暮らすバルト海の港町、自由都市ダンツィヒ。

話は祖父母の出会いまで遡る。カシューブ人の祖母がジャガイモ畑にいたときに、警察に追われた祖父がスカートの中に逃げ込み、母アグネスが誕生。
 母は野戦病院で働いていたときにマツェラートという男と知り合い、結婚。母は従兄ヤンと不倫の関係にあり、オスカルは推定上2人の父親を持つことになった。
 そしてオスカルが生まれる。胎児のときに「大きくなったら店を継がせよう」という父の声を聞き、「3歳で成長を止めよう」と決意。3歳の誕生日に自ら地下室の階段から落ちて、「そのせいで成長が止まった」かのように偽
装、そして金切り声でガラスを粉々にする能力を手に入れた。

 ある日家族で海岸を散歩しているとき、海中から引き上げられた馬の首から太いウナギが出てくるのを目撃する。そのショックで母はとり憑かれた様に魚を食べ続け、ついには死ぬ。
 いつもブリキの太鼓を購入していたおもちゃ屋が、「水晶の夜」(1938年11月9日)に襲撃を受ける。 
 新たに太鼓を手に入れられなくなったオスカルは、ヤンに頼んで修理が出来る人のところに連れて行ってもらう。行き先はポーランド郵便局で、ドイツ軍の襲撃に巻き込まれヤンは死ぬ。(←1939年9月1日のドイツ軍によるヴェステルプラッテ襲撃)
 オスカルの父マツェラートは、オスカルの想い人マリーアを妊娠させ、結婚する。やがてクルトが生まれた。

 傷心のオスカルは、小人サーカスに入って前線の慰問旅行に出かける。巡業先のノルマンディで、連合軍の上陸作戦に巻き込まれ仲間を失う。(1944年6月)

 オスカルはダンツィヒの我が家に戻る。ソ連の軍隊がダンツィヒに迫っていた。避難していた地下室にロシア人たちが押し入って来たとき、父マツェラートはナチス党員のバッチを飲み込もうとして喉に詰まらせて死んだ。父の死をきっかけに、オスカルの成長が始まった。3歳児の姿からせむしのような身体になる。


 戦争が終わり、マリーアの姉を頼ってデュッセルドルフに行く。オスカルはそこで墓石会社に入り彫刻の勉強をする。その後美術学校のヌードモデルにスカウトされ、オスカルをモデルに描いた絵が評判になる。
 その絵がもとでマリーアとの間に悶着が起き、別々に暮らすことに。引越し先の先住人のクレップと一緒に、ジャズバンドを始める。ジャズバンドをやめた後も、太鼓の演奏でレコードまで出し、成功を収める。
 犬を連れて散歩に出かけたオスカル。犬がどこからか人間の薬指をくわえて持ってきた。その様子をヴィトラールが見ていた。
 ある日、「成功なんかもうたくさん」と言ったのを、「自分こそ新聞に載るような人間になりたいのに」とヴィトラールに咎められる。「だったら、薬指を持って警察に行け」。ヴィトラールはそのとおりにし、オスカルは殺人の疑いで逮捕される。
 そして30歳の誕生日の当日、真犯人が判明。さて、これからどうしようか、というところで物語は終わる。

ブリキの太鼓に執着し続ける「永遠の3歳児」が見つめてきた、激動の20世紀前半。
ざっとあらすじを書きましたが、その他のエピソードもぶっとんだものばかり。600ページの分厚い本ですが、むちゃくちゃ面白いので是非。

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コメント

「ブリキの太鼓」の話は映画でちょろっと観た事があります。
「永遠の3歳児」と言うより「永遠の5歳児」の感じでしたね。
わりと深い話しだった記憶はあるのですが、いかんせん一部分しか観ていないので全体として、如何なんだろう?
なんとなく「西部戦線異状なし」の国内版の様なイメージがあるんですけど、、、。

yanoschさま、こんばんは!

映画はまだ見たことないんですが、大声を出してガラスを割るシーンは有名ですよね。
「永遠の3歳児」と書いてしまいましたが、読み進めていったところ、途中で成長するということが判明。

話は、作者ギュンター・グラスの半生をなぞっているような感じです。時代を反映して、「水晶の夜」やポーランド侵攻、ノルマンディー上陸などの歴史的イベントと絡ませています。
巻末のグラスの年表と較べて読んでみるのも興味深いと思います。
もちろん、グラスは3歳で成長を止めたということもなく、SS部隊の一員として召集されたわけですが・・・。


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