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ギュンター・グラス著『猫と鼠』感想

『猫と鼠』Katz und Maus
ギュンター・グラス著/高本研一訳

『ブリキの太鼓』に続くグラスの小説第二作。

 冒頭、ヨアヒム=マールケの大きな喉仏が鼠のようだと、同級生たちから猫をけしかけられる。
 病弱で泳けなかったマールケだったが、座礁したポーランド海軍の掃海艇の中に潜水する話を聞いて、水泳の練習に精を出し周囲も驚くほど上達する。そして何度も潜っては蓄音機などの「宝物」を見つけてくるのだった。
 マールケは教師に将来の夢を聞かれて、「道化師になってみんなを笑わせることだ」と答える。聖母マリアを篤く信仰し、勉強もそこそこ出来て、いつも何かしらやって同級生たちから一目置かれるマールケだったが、どこか周囲と相容れないようなところがあった。
 
 卒業生の海軍大尉が講演に来るが、大尉の勲章が盗まれるという事件が起こる。誰からともなく「あれはマールケの仕業に違いない」という噂が流れ、事実そうだった。マールケは転校させられた。
 「ぼく」がマールケは久しぶりに会った時、彼は入隊していた。戦車隊員として活躍し、騎士十字勲章を受けていた。
 休暇で帰ってきたマールケは、母校での講演を希望する。しかしそれは許されなかった。マールケは、校長を待ち伏せて殴ったあと、「ぼく」が引き止めるのも聞かず、あの掃海艇の中に潜っていった。

 600ページを越す大作の『ブリキの太鼓』とは打って変わって、200ページ程度の短編ですが、戦時下ダンツィヒの青少年たちの日常が丹念に綴られています。
 「猫」と「鼠」は、それぞれナチス・ドイツとポーランドの象徴しているんでしょう。あるいは、軍国主義を押しつけようとする社会と、それに抗わずにはいられない青年、とも言えるでしょうか。大尉の勲章を盗んだのも、出来心からではなくて、戦功をひけらかすような態度が気にくわなかったからだし。

 私にとって「ギュンター・グラス」と言うと、冗舌でグロテスクというかキッチュなイメージが強いのですが、本作にはそういうところはほとんどありませんでしたね。周囲に溶け込めず、死を選んで海に漕ぎ出すというところから、『アルネの遺言』を連想しました。ちょっと切ないところもあるというか。
 掃海艇からどこかの船に潜り込んで密航しようと言ってますが、いずれにせよ、閉塞した社会や自分の将来に虚しさを感じ、逃げ出したかったのでしょう。

 『ブリキの太鼓』はグラスの人生で起こった出来事をなぞっていますが、オスカルは少年期でも3歳児の姿だったので軍隊に行ってません。その書けなかった部分を書いたのが本作。
ダンツィヒ3部作の最後『犬の年』はどんなことが書かれているのでしょうか。

あ、そうそう。本作にはオスカルも登場します。直接登場人物と絡むわけじゃないけれど。
「ぼく」たちが海水浴場に行くと、3歳くらいの男の子がブリキの太鼓を叩いていたとか、「塵払い団」と名乗る不良少年のグループが教会を襲撃したが、そのグループは3歳くらいの男の子をマスコットにしていたと、戦地に赴いた「ぼく」への手紙に書いてあったとか。
「犬の年」にも出てくるのかな。読むのが楽しみです。

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