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ギュンター・グラス『犬の年』感想

「犬の年」上・下
ギュンター・グラス著/中野孝次訳
(現代の世界の文学シリーズ)
新潮社 590円(←1969年当時)

「ダンツィヒ3部作」の第3作目。
歯軋り屋ワルター・マテルンとふとっちょのエドアルド・アムゼルの友情を描く。
 それと同時に、リトワニアの牝狼を祖先とする漆黒のシェパードの系譜でもある。「ぺルクーンがセンタの父となり、そしてセンタがハラスを産み、ハラスがプリンツの父となり、プリンツが歴史を作った」。

大戦前・ナチが支配した時代・戦後、と物語は三部構成。
図書館で借りた本ですぐ返さなくちゃならないから、ザザっと斜め読みですが、あらすじはこんな感じ。

第一部「一番方」。
 語り手は鉱山主で同会社社長のブラウクセル。ワルターとアムゼルの少年時代を語る。二人はナイフで血を出しあって義兄弟の契りを結んだ。
 ある日、ワルターは友情の証としてアムゼルからプレゼントされたナイフを、「他に投げるものがなかったから」と衝動のままにヴァイクセル河に投げ込んでしまう。
 ワルターの父で粉屋のアントンの黒い犬センタは、ハラスという仔犬を産む。
 父がユダヤ人であると疑われるアムゼルは案山子作りの天才で、それを見て空から鳥が怯えて消えるほどだった。ギムナジウムの学生の頃、大きな鷲の形の案山子を作ったところ、ワルターの祖母の死を始め悪いことが続いたため、アムゼルは案山子作りを止めさせられる。

第二部「愛の手紙」。
第一部の作者ブラウクセルに雇われた役者:ハリー・リーベナウが従妹のツラにあてて書く手紙という形式で綴られる。
ハリー、ツラ、そしてイェニーは、ナチの支配下で成長していく。イェニーはマテルンとアムゼルを教えた教師が拾って育てた優しい少女。それに対しハリーに愛されるツラは、悪魔のような少女だった。
 ハリーの父に引き取られたハラスは、プリンツという仔犬を産む。プリンツはヒトラーに献上され、彼の愛犬となる。
 アムゼルはハラスの絵を描く。ハラスがアムゼルに懐くのを気に入らないツラは、「ユダヤ人」と愚弄する。
 アムゼルは莫大な遺産を受け継ぎ、再び案山子を、等身大の動くSA隊員の人形を作ろうとする。材料を集めるために彼はワルターに懇願し、ワルターは彼のためにナチ党員となる。
 しかしワルターはナチ党員として活動するにつれ、それを愚弄するかのようなナチ人形を許せなくなる。彼はSAの仲間とアムゼルを襲撃し、殴り倒す。歯を全部叩き折られたアムゼルは、ハーゼルオフと名を変え、ベルリンへ向かう。
 バレエで頭角を現したイェニーは、スカウトされてベルリンに行く。
 ハリーが勤務していたカイザーハーフェン砲台で鼠が大量発生。悪臭が立ち込めるが、それは撲殺された鼠の死骸のせいではなく、白い骨の山=シュトゥットホーフ収容所から流れてくるのだった。
 総統の56回目の誕生日に、プリンツは逃げ出す。そしてイギリス軍の捕虜になっていたワルターを新しい主人に選ぶ。

第三部「マテルニアーデ」。
語り手はワルター。彼についてまわる黒い犬を、ヒトラーの愛犬にそっくりなその犬を、プルートと名付ける。
 復讐者となった彼は国中を歩き回り、あの雪の日に自分と一緒にアムゼルを襲撃した仲間を訪ねて回り、お礼参りをする。
 流浪の生活を送っていたワルターは、ある日プルートを置き去りにしてベルリンに向かう。ところが、あちこちで噂だけは聞いていた有力者:金歯男が、プルートを連れて現れる。金歯男はイェニーの酒場に彼を案内し、子供の頃に彼がヴァイクセル河に投げ込んでしまったあのナイフを差し出す。金歯男はアムゼルだったのだ。
 歯軋りしながらワルターは、再びあのナイフを運河に投げ入れる。しかしアムゼルは「すぐに見つけられる。二週間以内にはきみはまたあの昔ながらのナイフを手に持てるよ。――知ってのとおり、僕らはあれで義兄弟になったんだ。」ワルターは「ユダ公め!」と言って崩れ落ちるように倒れる。
 金歯男はワルターを自分の鉱山に連れて行く。そこでは今は、ありとあらゆる案山子をつくっていた。

友情、というより愛憎?

アムゼルのデモーニッシュな芸術的才能に魅入られながら、それゆえに憎まずにはいられないワルター。友を襲撃したことが心の傷となり、立ち直れないでいる。

義兄弟の契りを結んだワルターから襲撃を受け、それをバネにのし上がり、ついには征服するアムゼル。ワルターの気持ちを知っているがゆえに、半ば復讐のため、その手を離さない。

アムゼルは、まるで案山子を作ることでドイツを嘲笑し、復讐しているかのようだと思いました。二人の関係は、ドイツとユダヤの関係を象徴しているかのようです。

深いな~。

オスカルも登場していましたね。
第2部で、桟橋で汽船「ヘヒト」を見送る子どもたちの中にいました。「塵払い団」のマスコットの話題も出てましたね。

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