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ギュンター・グラス『局部麻酔をかけられて』感想

『局部麻酔をかけられて』
ギュンター・グラス著/高本研一訳
現在の世界文学 集英社 

「世界が彼を苦しめるから、私たちは努力して彼に局部麻酔をかける」

西ベルリンで国語と歴史を教える高校教師シュタールッシュは、切端咬合の治療のために歯医者に通っている。治療のための局部麻酔を彼は恐れる。
治療の合間にシュタールッシュは身の上話を語る。セメント工学でしかるべき業績を上げ社長の娘と婚約しながら、その娘に捨てられ、手切れ金で教師になる勉強をした。
 診察室に置かれたテレビは、普通のテレビ放送のほかに、彼の妄想を映し出す。

 彼の目下の悩みは、お気に入りの学生シェールバウムのことである。感受性が強く、変革に燃える彼は、ベトナム戦争に反対し、抗議行動のために愛犬を焼く計画を立てている。ケンピンスキーホテルのカフェでケーキを食べているご婦人方の前で。曰く、ベルリンの人間は並外れた犬好きなので、そうすることが何よりこたえるだろうからである。
 シュタールッシュの同僚、イルムガルト・ザイフェルトは、少女時代にBDM(ドイツ女子青年団、ヒトラー・ユーゲントの少女版)で罪のない百姓を密告した過去に囚われており、「純粋」で才能豊かなシェールバウムに希望を見出している。
 17歳のころ、少年ギャング団を率いていたシュタールッシュだったが、現在40歳の教師として、そのような過激な行動をやめさせるよう説得しないわけにはいかない。
シェールバウムのガールフレンドのヴェロニカ・レーヴァント――毛沢東を読み、部屋にチェ・ゲバラのポスターを貼っている――は、「彼の邪魔をしないで」とバーバリ絨毯の上に身を投げ出し挑発する。

シュタールッシュからシェールバウムの話を聞いた歯医者は、彼に興味を持つ。シェールバウムを招待し、彼の歯の治療を申し出る。

結局、シェールバウムは計画を諦める。17歳のときのアナーキズムを吹聴する、シュタールッシュのような真似はしたくないからと言って。

シュタールッシュは、ケンピンスキーの前でスピッツを焼き殺す妄想をし、イルムガルト・ザイフェルトと婚約する。

本作が発表されたのは1969年。『犬の年』(1963)以降、政治活動に傾き、この本作もベトナム反戦運動を巡る高校生とその教師の葛藤を描いています。
若者をなだめるシュタールッシュも、一皮むけば、自分を捨てた婚約者に対する憎悪や、世界をブルドーザーで破壊してやりたい衝動が渦巻いています。

世界の矛盾や不条理に対する憤りに対して、局部麻酔や妄想で感覚を麻痺させるしか術がない・・・。

ケンピンスキーホテルは、クーダムに面した一流ホテル。ベルリンに行ったら、シュバルツヴァルダーキルシュトルテ(黒い森ケーキ)を食べよう。

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書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

Grüß Gott Frau Minmindori!
小説の書かれた時代背景もあるのでしょうが、なかなか考えさせられる内容のお話の様ですね。
ただ日本にも同じ様な時代があったはずなのに、その様に問題提起をする小説があったのかと言う事を考えると、なんとなく寂しい気もします。
おそらく私が知らんだけやろうけど、、、。
ところでBerlin小生活の件、「ベルリンでの生活」と言う言葉で検索すると、結構参考になるブログなんか出てきますよ。もう検索済みだとは思いますが。
9月までもうアッと言う間、今回は大ボケ無しのBerlin滞在リポートを大変楽しみにしています。

yanoschさま

ベトナム反戦を扱った日本の小説、検索かけてみたけど引っかかりませんでした。あったとしてももう廃れてしまったということですかね。
いずれにせよ、現代の日本じゃ政治に関して熱く語ることは、格好悪いって風潮ですしね。

検索してみるのですが、さすがにガスや風呂の使い方とかまで載っているの少ないんですよね~。

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