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ギュンター・グラス著『ひらめ』感想

ギュンター・グラス著『ひらめ』上・下
現代の世界文学 集英社

この小説は、グリム童話の『漁師とその妻』をモチーフに取っています。

ある漁師が吊り上げたひらめを逃がしてやる。ある日ひらめが恩返しにやってきて、漁師に言われてその妻イルゼビルの望みを叶えてやる。しかしそれがだんだんエスカレートしてくるので、妻を元の粗末な小屋に連れ戻したという話である。
グラスはこの「ひらめ」を、男性に母権制社会からの解放を助言するメフィストフェレスのような役割を演じさせている。
そして、「ひらめ」の歴史的役割を裁く女性解放法廷が、ベルリンの元映画館で開かれた。

その裁判の様子などを、現代の作家である「私」が、妊娠中の妻「イルゼビル」に対して物語る、一種の「枠小説」の形をとっています。もちろんグラスのことだから、一筋縄ではいかなくて、奔放かつグロテスク。

裁判の傍聴を許された「私」は、裁判の関係者の中に、新石器時代から現代に至るまで、様々な時代に滞在していたときに関係のあった料理女たちを見出している。
新石器時代の原母というべき、3つの乳房を持つアウラ。「私」は漁師エーデク。ひらめを捕らえ、後々の時代までひらめから助言を受けるようになる。
鉄器時代のヴィガ。
祭司メストヴィーナ。
14世紀のドロテーア。狂信的なキリスト教徒。
15世紀、デブの修道女マルガレーテ。料理をつくることで修道会の財産を増やす。
18世紀、ジャガイモをプロイセンに移入したアマンダ。
アマンダの孫娘、ゾフィー。投獄された恋人を救うために、毒キノコ料理をつくる・・・。


陪審員の中の一人、グリゼルデとの浮気に勘付いたイルゼビルは、彼女を招き、「私」の手料理を食べながら二人で結託して「私」を攻撃する。「結局この人、マザコンなのよ」。「私」はそれに耐えながら、ひたすら教会のオルガニスト、ウラ・ヴィツラフを想う。

この妻妾直接対決は、最新作の自伝『箱型カメラ』にも出てましたね。この『ひらめ』は私小説じゃないですが、この小説執筆中に、アンナ夫人と離婚し、ウラをほうふつとさせるウテ夫人と結婚したそうです。

最終的に、ひらめは海に帰されるという判決が下る。「私」は女性たちと一緒に、ひらめをバルト海に放す。
イルゼビルが女児を出産する。

童話のイルゼビルは、次々と大きな住居を欲しがったが、現代のイルゼビルたちは女性の解放を要求する。

このころ華やかなりし女性解放運動を揶揄しているかと思いきや、この小説は実は、グラスの女性賛歌なのではないかと思います。

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