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リュドミラ・ウリツカヤ著『通訳ダニエル・シュタイン』感想

『通訳ダニエル・シュタイン』上・下
リュドミラ・ウリツカヤ著/前田和泉訳
新潮社 新潮クレスト・ブックス 
定価 (上)2,000円(下)2,200円(税別)


通訳ダニエル・シュタイン(上) (新潮クレスト・ブックス)


ユダヤ人であることを隠してゲシュタポでナチスの通訳を務め、そこで手に入れた情報をもとに、ゲットーのユダヤ人を脱出させた男、ダニエル・シュタイン。実話を基にした物語。

というあらすじを見て、その脱出劇を描いていると思ったら違った。それよりももっとスケールの大きい、愛と寛容についての物語だった。本書は、ダニエルを取り巻く周囲の人間が書いた手紙や新聞記事、インタビューなどを散りばめ、「モンタージュ」的な手法でこの類まれな人を描いている。

 ゲットー脱出を手引きしたことがバレたダニエルは、逃亡し修道女のもとで15ヶ月間匿われる。そこでキリスト教と出会い、残りの人生を神に捧げることを誓う。
 洗礼を受け神父になった彼は、戦後、イスラエルに渡り宗派を超えた教会を目指す。しかし、「ユダヤ人のキリスト教徒」である彼への風当たりは、ユダヤ人はもとより、カトリックやイスラム側からも強かった・・・。

 ホロコースト、ユダヤの歴史、パレスチナ情勢、キリスト教の教義・・・複雑な話のように思われるかもしれない。ところがぐいぐいと引き込まれてしまう。それはひとえに、ダニエルの魅力によるものである。
 飄々としてユーモアを漂わせ、祭服よりも着古したセーターを好み、いつも悩める人々のために駆けずり回っている。ユダヤ教の祭服を着た男と、スクーターで二人乗りだってへっちゃらだ。
そんな型破りさゆえに、敵も多いが、心を寄せずにはいられない。

驚くべきことに、神父ダニエルには実在のモデルがいて、彼を巡るエピソードはほぼ実話なんだそうである。

オスヴァルト・ルフェイセンがその人で、生まれながらのユダヤ人でありながら、キリスト教徒であるがゆえにイスラエル国籍取得を阻まれ、裁判沙汰に なったこととか、前ローマ法王ヨハネ・パウロ2世と旧知の仲で、バチカンで対面したとか(この場面には、ラツィンガー枢機卿、現法王ベネディクト16世らしき人物も登場する)。

 ダニエルが手引きして脱出させたユダヤ人たちは、「黒い森」に隠れ住んだ。映画『ディファイアンス』(ダニエル・グレイグ主演)にも、ゲットーから脱出した300人のユダヤ人が合流するエピソードがあるけど、それと関係あるのかしら。

まあ、とにかく読んでください。

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