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ナンシー・ヒューストン著『時のかさなり』感想

時のかさなり (新潮クレスト・ブックス)Book時のかさなり (新潮クレスト・ブックス)

著者:ナンシー ヒューストン
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第1章:2004年のカリフォルニア、豊かな家庭で甘やかされて育ったソル。
顔のアザをとる手術をしたが、簡単な手術のはずだったのに、患部が化膿しより大きな傷を残すになった。
IT企業に勤める父・ランダルの出張にくっついて、ドイツに行くことになった。曾祖母エラは姉グレタと何十年かぶりに対面。しかしそこにはぎこちない空気が流れていた。


第2章:ランダル

1982年、母セイディの研究のため、レバノン戦争真っ只中のイスラエルに移り住んだランダル。ヌーザという年上のアラブ人の少女に恋をする。ヌーザは手のひらに痣を持ち、特殊な力を持っていると言った。同じく首の辺りに痣を持つランダルに、親近感を持った。
しかしイスラエルとパレスティナの関係は悪化する一方で、ついに難民キャンプで虐殺が起こる。
ある日、ヌーザに声をかけようとしたランダルは、彼女から憎悪の目を向けられる。難民キャンプに彼女の親戚がいたのだ。
母セイディは事故に巻き込まれ、車椅子の必要な体になる。ランダルは、あの日向けられたヌーザの「邪視」のせいだと信じる。

第3章:セイディ

1962年、トロントで祖父母の下で厳しく育てられたセイディ。歌手で、自由奔放で魅力的な母クリスティーナに憧れていた。ある日、母は結婚しセイディを引き取って、ニューヨークで暮らし始めた。それと同時に、芸名を「エラ」にした。
ある日エラを訪ねてリュートという男が訪ねてくる。 

第4章:クリスティーナ

金髪で青い目で、歌の上手なクリスティーナ。ある日、お気に入りの人形に触られたことの腹いせに、姉グレタはクリスティーナが養女であることを明かす。
兄ローターが戦死し、一家のもとに養子としてヨハンという少年がやってくる。
ドイツ人の戦災孤児と聞かされていたが、実はドイツ人に誘拐されたポーランド人の少年で、本当の名はヤネクと言う。クリスティーナも誘拐された子どもに違いないと言い、二人はポーランドに帰る日を待つ。
終戦後、拉致被害者救済組織により、クリスティーナはウクライナ人だということが判明する。ヤネクはポーランド・ポズナンへ、クリスティーナはウクライナ出身の医師の養女としてトロントへ行くことが決まる。

別れる前に、二人は自分の「本当の名前」を自分で選ぶ。ヤネクが選んだのは「リュート」、クリスティーナが「エラ」。
その名を頼りにお互いを見つけ出すことを誓う。

なぜエラが姉グレタの人形を見て「これは私のものだ」と言ったのか、なぜ芸名を「エラ」にしたのか、なぜエラは痣に「リュート」という名をつけているのか、パズルのピースがはまっていくように、最後の数行で謎が解けていく。この構成の見事さに唸らずにはいられない。

ある家族の年代記というのは、たいてい曾祖母辺りから下っていきますが、これは時を遡っていく。それもそれぞれ6歳の子どもの目で語られるんですよ。こういうのは初めて読みました。

この物語の背景には、第2次世界大戦中に行なわれた、ナチス・ドイツによる拉致事件があります。

1940~5年、戦争により失われた人口を補うため、占領下にあった東欧諸国から子どもたちを誘拐し「ゲルマン化」する、という計画が実施されました。子どもたちは「レーベンスボルン」(「生命の泉」を意味するドイツ語)という施設を経て、ドイツ人家庭に引き取られたそうです。

クリスティーナはこの計画の犠牲になった子どもで、その娘セイディは、母の出生の謎を探るために「レーベンスボルン」の研究者となりました。それをよく思わないエラ、謎を追い求める母セイディを冷めた目で見つめるランダル・・・ここには母と子の葛藤も描かれていて、読み応えがあります。

「レーベンスボルン」を、金髪碧眼のアーリア人を生み出すために、親衛隊に女性をあてがって子作りさせる場所、としてしか知りませんでしたが、こんなことまでやっていたんだ・・・と知って驚きを禁じえませんでした。


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