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サーシャ・スタニシチ著『兵士はどうやってグラモフォンを修理するか』感想

1990年代のユーゴの内戦が少年の目線で描かれています。

兵士はどうやってグラモフォンを修理するか (エクス・リブリス)Book兵士はどうやってグラモフォンを修理するか (エクス・リブリス)

著者:サーシャ スタニシチ
販売元:白水社
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ボスニアの小さな町ヴィシェグラードに生まれ育った少年アレクサンダルは、ある日、祖父スラヴコから魔法使いの帽子と杖をもらう。祖父はその後まもなく死ぬが、アレクサンダルは祖父の遺志を継ぎ、故郷と家族の物語を紡ぎ始める。

冒頭の物語部分、曽祖父の家での収穫祭などのエピソードは、サラエボ出身のエミール・クストリッツァ監督の映画「アンダーグラウンド」を思い出すようなにぎやかさです。

教室からチトーの肖像が外され、先生が「同志」という呼び名を拒否するあたりから不穏な空気が漂い始める。

1992年、ボスニア紛争勃発。戦火はヴィシェグラードにも及び、一家はアパートの地下室での避難生活を余儀なくされる。セルビア人兵士たちがアパートに侵入し、アレクサンダルはイスラム系の少女アシーヤをかばう。

タイトルの「兵士はどうやってグラモフォンを修理するか」に対応するエピソードはこの辺りにあります。
実際は修理などせず、腹立ちまぎれに壊してしまったのですが。

やがて一家は故郷を離れ、ドイツ・エッセンへと移住。アレクサンダルはアシーヤへ届くかどうかも分からない手紙を出し、『なにもかも大丈夫だったころ』という本を書く。

10年後、アレクサンダルは故郷を再訪するが、ドリーナ川に抱かれたヴィシェグラードはすっかり相貌を変えてしまっていた。
自分の作ったリストに従って、会いたい人、見たい場所を訪れるが、それは喪われたものを改めて確認することにほかならないのだった。

作者のスタニシチ自身、アレクサンダルと同様ヴィシェグラード生まれで、14歳で戦火を逃れドイツに移住。ドイツの大学に進み、以後ドイツ語で作品を発表し続けています。
少年が主人公ということで、内戦の詳しい実情とかは描かれてませんが、ただ物語がクストリッツァ的な陽気さ・奇想天外なムードから、現実的な暗いムードに変わっていくのが、少年の成長と重なります。

アシーヤの消息を求めて、あちこちに電話をかけるが空振り。しかし最後の最後に、雑音でよく聞き取れないが女性から電話がかかってくる。それがこの不条理に満ちた世界に差し込む一条の希望の光のようだ。
すがすがしい読後感。


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