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パスカル・メルシエ著『リスボンへの夜行列車』

Wenn es so ist, dass wir nur einen kleinen Teil von dem leben können, was in uns ist – was geschieht mit dem Rest?

「我々が、我々の中にあるものの本の一部分を生きることしかできないのなら、残りはどうなるのだろう。」(p26)

「古典文献学の教師ライムント・グレゴリウス。五十七歳。ラテン語、ギリシア語、ヘブライ語に精通し、十人以上の生徒と同時にチェスを指せる男。同僚や生徒から畏敬される存在。人生に不満はない―彼はそう思っていた、あの日までは。学校へと向かういつもの道すがら、グレゴリウスは橋から飛び降りようとする謎めいた女に出会った。ポルトガル人の女。彼女との奇妙な邂逅、そしてアマデウ・デ・プラドなる作家の心揺さぶる著作の発見をきっかけに、グレゴリウスはそれまでの人生をすべて捨てさるのだった。彼は何かに取り憑かれたように、リスボンへの夜行列車に飛び乗る―。本物の人生を生きようとする男の魂の旅路を描き、世界的ベストセラーを記録した哲学小説。」(公式ホームページより)


判で押したような単調な毎日を送る男が、謎めいた女が発した「ポルトゥゲーシュ(ポルトガル語)」という響きに心揺さぶられ、それがきっかけで訪れた古書店で、ポルトガル語で書かれたアマデウ・デ・プラドなる作家の『言葉の金細工師』という本と出会う。深い思想、そして本の中の著者のポートレートに心奪われたかのように、グレゴリウスはすべてを捨ててリスボンへの夜行列車に飛び乗る。リスボンで、プラドの関係者に会って彼の人生を辿るのだが・・・。

オジサンの自分探しの旅、と言えばそれまでなんですが。
その一言で片付けるのが惜しいほど美しい小説。ほんの一言がきっかけで、どこかへ旅立ちたくなる気持ち、分かるな~。
久々に読んでて陶酔できるような小説に出会いました。

プラドは、幼い頃から優秀で、カリスマ性のある医師でした。
1965年8月、当時独裁体制化にあったポルトガルで、「虐殺者」と呼ばれていた秘密警察の将校の命を救ったことがきっかけで、人々は彼を避けるようになる。それに苦しみ償うかのように抵抗運動に身を投じたことが明らかになります。
そして運命の女性との出会い。誰をも魅了する輝かしいオーラの持ち主でありながら、誰よりも繊細で傷つきやすい魂の持ち主だったプラドは、秘密警察に狙われた彼女を国外に逃すと、それ以降は生きる屍のようになって晩年を過ごすのです。

スペインの独裁政権は有名だけど、ポルトガルでも独裁があったのですね。しかも1933年から、74年に「カーネーション革命」によって倒されるまで続いたとは、今回初めて知りました。

グレゴリウスは、プラドに関わりのあった人たちを訪ね歩き、彼について共感を深めていき、相手もまたグレゴリウスの中にプラドを見出したりして、お互い忘れ難い存在になっていく。そして今までとは別の人生を歩みだすのです。

作者のパスカル・メルシエはスイスの作家。本業はベルリン自由大学の教授で、専門の哲学研究を生かして小説を執筆してきました。本著はドイツで200万部のベストセラーとなり、世界31ヶ国で刊行され、2012年には映画にもなりました。主演はジェレミー・アイアンズですが、グレゴリウスというには華がありすぎか。私のイメージでいうとパスカル・グレゴリーあたりかな。(←渋すぎ)

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