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ユリア・フランク著『真昼の女』感想

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第2次世界大戦終戦直後、元はドイツ領で今はソ連に占領されているバルト海沿岸の街シュチェチン。ペーターは母アリースに、西へ逃げる人々でごった返す駅に置き去りにされる。

時は変わって20世紀初頭、ドイツ・ラウジッツ地方で生まれたヘレーネは、精神を病んだユダヤ人の母には顧みられることなく、歳の離れた姉マルタを母代わりにして育った。並外れて聡明で、医学を志すヘレーネだったが、大学に進学することは許されず、看護師として働き始める。

母のいとこファニーを頼って、姉マルタとともにベルリンへ出る。やがてカールという男と婚約をするが、カールは事故死してしまう。

失意のヘレーネの前に現れたヴィルヘルムは、ユダヤ人の母を持つヘレーネのために、偽の身分証を偽造してまで結婚を望む。それに押し切られるようにヘレーネは結婚に同意し、「ドイツ人女性のアリース」と出自と名前を偽って、夫ヴィルヘルムとともに、彼の仕事の関係でシュチェチンへ移る。

しかし、彼女がすでに処女ではなかったことを知るやヴィルヘルムの愛は冷めてしまう。二人の間に出来たペーターにも愛情を注ぐことはなく、家を出る。
ヘレーネは看護師として働きながらペーターを育てるが、それでも愛情はもてなかった。そして彼にして上げられることがもう何もないことに気がつくと、我が子を捨てる決心をする。

駅に置き去りにされたペーターは、父親の兄である叔父の家で、厄介者扱いされながら育った。
そして17歳の誕生日、母が訪ねてきたが・・・・。

題名になっている「真昼の女 Die Mittagsfrau」は、スラブ地方の伝承に出てくる幽霊のことだそうです。
暑い真昼に畑に現れ、昼休みを取らずに働く者の手足を麻痺させ理性を奪い殺してしまう。助かるには、昼は休んで、その間「真昼の女」に農作業について語って聞かせないといけない。

このヘレーネには実はモデルがいて、それは著者ユリア・フランクの父方の祖母なんだそうです。フランクの父親は、ペーター同様駅に置き去りにされ、その後母とは1度会ったきり。そのエピソードが本書を書くきっかけとなったとか。
家族構成や婚約者の事故死とか、これ以外のエピソードは著者の創作によるものですが、ひとりの女性の生き様とともに、2つの大戦をまたいだドイツの苛酷な歴史が描かれています。
第1次世界大戦の勃発とドイツの敗戦、インフレ、ナチスの台頭、ユダヤ人迫害、ソ連侵攻、東西ドイツ分裂・・・。

ヘレーネは影の薄い女性で、周囲に流されて生きています。そのくせ心に闇を抱えているのは、出自のせいなのか、母に顧みられることなく育ったせいなのか。彼女自身が幽霊、「真昼の女」かのようです。
我が子ペーターとも心を通わせられず、逃げるかのように働きづめる。よかれと思って駅に置き去りにするのは、「真昼の女」に理性を奪われたからかもしれない・・・。

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