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オルガ・トカルチュク著『逃亡派』感想

前作『昼の家、夜の家』が日本でも好評を得たポーランドの人気作家オルガ・トカルチュクによる新たな代表作。現代の〈紀行文学〉として本国で高く評価され、2008年、ポーランドでもっとも権威ある文学賞《ニケ賞》を受賞しました。


『昼の家、夜の家』が一つの土地への定着をめぐる物語であったのに対し、本作のテーマは「旅」、「移動」。

クロアチアへ家族旅行に出かけるが、妻子が失踪してしまうポーランド人男性。アキレス腱の発見者である17世紀の解剖学者の生涯。弟の心臓を祖国ポーランドに葬るため、パリから馬車で運んでいくショパンの姉ルドヴィカの物語……。
前作同様、エッセイ風の一人称の語りと交じり合うようにして、時代も人物もさまざまな三人称の物語が、断片的に、あるいは交互に綴られていきます。

表題作の「逃亡派」とは、ロシア正教のセクトのうちの一つ、もしくはその信者を指します。本書の執筆中、モスクワ旅行をしたときに、作家は同行した宗教学者の話からこのセクトの存在を知る。放浪を唯一の正しい生き方とする彼らの教えに共鳴し、これこそが作品のコンセプトを象徴すると考えた彼女は、すぐにタイトルに決めたとか。

アンヌシュカは難病の息子を抱えてモスクワで暮らしている。週に一度の外出で教会から帰る途中、地下鉄の出口で、絶えず足踏みしながら何かを呟く奇妙な女に出会う。それが「逃亡派」の信者だと知ったアンヌシュカは、外出のたびに女を追いかけ、ついには家に戻らず・・・。

そして隠れテーマ(?)として人体解剖、人体標本。
作者を思わせる語り手の女性「私」は、人体標本に興味を持ち、世界各地の博物館を訪れる。それは巡礼のようで、この「巡礼の目的はいつもわたしとは別の巡礼者」。
17世紀の解剖学者で公開解剖で腕を振るったフレデリク・ルイシュ。ルイシュのつくった標本コレクションがロシア皇帝の手に渡りロシア初の博物館クンストカメラの礎を築くまで。
ルイシュの後継者を自任するブラウ博士が、亡くなった著名な解剖学者の部屋で見た驚くべき標本。
オーストリア皇帝ヨーゼフ2世に仕え、その死後標本にされた黒人アンジェロ・ソリマンのエピソード。

現在、標本作成の技術は驚くほど進化しており、樹脂加工し半永久的に保存できるそうです。作者はそれに惹かれる一方、不安を覚えます。「この技術が、永遠に、オリジナルをコピーに変えていく。」

巻末に、本作に出てくる人体標本のコレクションがある博物館のアドレスが紹介されていますが、ウィーンの医学史博物館(ヨゼフィーヌム)の蝋人形コレクション、生々しかった・・・。

ところどころに昔の地図の図版が挟み込まれているのが、ゼーバルトの作品を思い出しました。そういやゼーバルトでも、解剖をテーマにした作品あったよな・・・。

白水社ホームページ:http://www.hakusuisha.co.jp/detail/index.php?pro_id=09032

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