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ティムール・ヴェルメシュ『帰ってきたヒトラー』(下)感想

図書館で予約した下巻の貸し出しの順番がやっと回ってきました。

現代に蘇ったヒトラーはじわじわと人気を伸ばし、政治的風刺を行う一流のエンターテイナーと評価され始める。そして極右政党本部への突撃取材を行った特別番組に対し、革新的なテレビ番組などに贈られるグリメ賞を受賞するにいたる。

その矢先、ネオナチの若者たちに襲われる。すぐさまニュースとなるが、それを聞いた各政党が、人気者の彼を取り込もうとして、入党の誘いの電話をかけてくる。

ヒトラーの影響力を利用しようとして既存政党がすり寄ってくるのは1930年代も同様だったわけで、それを考えるとうすら寒くなってきますね。

最後は、本の出版の話が舞い込んだり、新しい番組をスタートさせ、ホームページも作ってまた歩き出すんだ!という(ヒトラーにとって)明るい未来を予感させるところで物語は終わっていますが、あながち荒唐無稽とは言い切れないところがミソですね。

ナチスにしたって最初から「ユダヤ人皆殺し!」なんてスローガンを掲げていたら国民の支持は得られなかったでしょう。「ドイツ国民に仕事を!そのためにユダヤ人を追い出せ!」という、単語を変えれば今の日本で聞かれてもおかしくないようなことを政策として掲げていたんですよね。

蘇ったヒトラーがプロパガンダのためのポスターに掲げたスローガンは、「悪いことばかりじゃなかった」。

この小説は風刺小説として読まれているんでしょうが、こういうのがベストセラーになるというのが時代の気分を反映していて興味深いですね。

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