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2015年11月

フランツ=オリヴィエ・ジズベール著『105歳の料理人ローズの愛と笑いと復讐』

いみじくも作中人物が言ったように、「みんな100歳老人の話なら何でも好きだもの」。最近元気な高齢者が主人公という物語が流行っていますね。
やっぱりこの激動の20世紀の出来事に絡ませることができるし、100歳まで元気に生きている人は、最近珍しくないから・・・。


自伝を書き始めたローズは1通の訃報を受け取る。その人、レナーテ・フルルなる女性に、ローズは心当たりがあった・・・。近所の少年に頼んで、その女性のことを調べてもらう。

1915年、黒海沿岸で生まれたローズは、8歳のときアルメニア人大虐殺で家族を皆殺しにされ、トルコのベイ(長官)に献上される。美しく成長したローズは、大商人に売られ、船でマルセイユへ。
マルセイユに到着後、船から逃げ出し、農民のランプール夫妻に保護される。
しかし幸福も長くは続かなかった。13歳のとき、夫妻が相次いで死に、ローズの後見人として農場に乗り込んできた甥の夫婦に奴隷のようにこき使われた。

羊の去勢の仕事で農場を訪れたガブリエルと運命的に出会い、駆け落ちしてパリへ。
祖母やランプール夫人に教わった料理をもとにレストランを開き、二人の子供にも恵まれた。
しかし自分を不幸のどん底に落とした人物たちへの復讐の想いやまず、旅行と称して出かけては、人知れず始末してきた。

1930年代、フランスでも反ユダヤの機運が高まっていた。ガブリエルは、論敵ラヴィスに、自分でも知らなかったユダヤ人だという出自を暴き立てられた。
また、ローズの浮気がばれたことにより、ガブリエルは子どもたちを連れてローズのもとを去った。

1940年、パリはナチス・ドイツの占領下にあった。そしてどういうわけだか、ナチス高官のハインリヒ・ヒムラーがローズの店を訪れた。
ローズの金髪碧眼の美貌と料理の腕、そして彼女のつくる活力の出る錠剤に惚れ込んだヒムラーは、自分のもとに来るように誘う。

1942年7月、パリではユダヤ人が一斉検挙され、ガブリエルと子供たちも冬季競輪場に連行された。彼らを助け出そうと、ヒムラーと連絡を取り、ローズはベルリンへ降り立った。
調査の間、ローズは「料理人」としてヒムラーのもとで暮らすことになったが、ヒムラーは手を出してくることはなかった。

そのうち軍の仕事を任されるようになり、ヒトラーのディナーを作りにベルヒテスガルテンに呼び出されることになった。
ローズの料理を総統は気に入ったが、その夜、酔わされたローズは何者かに乱暴された。
数か月後、ローズは自分が妊娠していることに気づく。ヒムラーの計らいで、生まれた女の子は「レーベンスボルン」に預けられた。そしてローズはパリに戻された。
調査の結果、やはりレナーテ・フルルは、このとき生まれた娘だったことがわかる。

夫と子供の死を知り、ラヴィスに復讐したローズは、アメリカに高跳びする。アメリカ人のフランキーと結婚したが、数年後、2度目の夫は心臓発作で死亡した。

1955年、パリ時代に知り合ったサルトルとボーヴォワールに
誘われ、中国へ。そこで12歳年下の柳と出会い、結婚する。しかし毛沢東と鄧小平の権力争いの最中、1968年に殺された。
再びマルセイユに戻ったローズは、マリ人の女の子カディと同棲する。そしてカディが生んだ娘と暮らして、現代にいたる。

今日はローズの誕生日。お祝いをしに、みんなが集まってくる・・・。

過激なオバアちゃんだな~。
105歳になった今でも厨房に立ち、出会い系サイトで相手を物色したり、拳銃でチンピラを脅したりしてるし。

「窓から逃げた100歳老人」でもそうでしたが、この手の話の主人公って、中国に行って世界一周して帰ってきますね。
特にフランスでは、1950年代にサルトルをはじめとする知識人がこぞって共産主義に走ったことから、この20世紀を語るうえではずせないトレンドなのでしょう。

原題は『 La cuisiniere d'Himmler (ヒムラーの料理女)』。日本版では、「愛と笑いと復讐の力を信じてる」というプロローグの中の言葉をクローズアップしていますね。(題名で全部説明しようって感じで、あまりセンスを感じないけど。)

ついでにドイツ版はというと、『Ein Diktator zum Dessert(独裁者にデザートを)』


切り口によって、同じ物語なのに印象が違うのが面白いですね。
ちなみにローズがヒトラーのためにつくったデザートは、リンゴのタルトでした。

ハラルト・ギルバース著『ゲルマニア』

今まで、ナチス・ドイツ時代のことを取り上げた作品は、おおむねドイツの戦争責任や、ホロコーストを扱っていましたが、ここ最近、違う角度から取り上げている作品が増えている印象を受けます。それも、エンターテインメントとして。


「1944年ベルリン。ユダヤ人の元敏腕刑事オッペンハイマーは突然ナチス親衛隊に連行され、女性の猟奇殺人事件の捜査を命じられる。断れば即ち死、だがもし事件を解決したとしても命の保証はない。これは賭けだ。彼は決意を胸に、捜査へ乗り出した…。連日の空襲、ナチの恐怖政治。すべてが異常なこの街で、オッペンハイマーは生き延びる道を見つけられるのか?ドイツ推理作家協会賞新人賞受賞作。」
(Amazon.jpより)

…この話、ナチス・ドイツ時代でやる必要があったか?というのが正直な感想。
レーベンスボルン「生命の泉」やサロン・キティ・・・この時代きってのスキャンダラスなネタではあるが、本筋とはあまり関係なし。取って付けた感がありましたね。

連日の空襲、ノルマンディーに連合軍が上陸する、という戦況にあって、ナチス高官の命令とはいえ、猟奇殺人事件を捜査させる、というのがなんとも不合理というか。ゲッペルス自ら「この事件を解決せよ。」とユダヤ人に命を下す、というのがなんとも・・・。

そこまでして捜査させる事件が、どれほどのナチスの秘密や陰謀に絡んでいるのかと思いきや、その辺の説明は一切なし。

読者にしてみれば、消化不良というか、設定を活かしきれていない、という印象でしたね。

ただ、ユダヤ人警部とSS将校の関係というか「バディ」要素が、一部の婦女子の間で注目されているようですよ(笑)。

m.soeurのアクセサリー 15個目

7月くらいに買った黒のバレッタとお揃いの、ネックレスを購入しました。
薄いグレーのリブのセーターに合わせたら、色味もぴったり。
黒のリボンがおしゃれです。

Img_0609

最近カジュアルな格好が多いけど、これ着けてどこかお出かけしたいな~。

DVD『鑑定士と顔のない依頼人』感想


一流の美術鑑定士にして、世界的に有名なオークショニア(オークションを仕切る人)であるヴァージル。画家崩れのビリーと組んで、オークションに出てきた掘り出し物を不正に入手してきた。そして、そうやって集めた女性の肖像画ばかりを飾った隠し部屋で過ごすのが、彼の至福の一時だった。

そんな彼のもとに舞い込んだ鑑定の依頼。資産家の娘クレアが両親の遺品の美術品や家財道具を査定して欲しいと連絡してきたが、電話越しや壁越しに話すばかりで一度も姿を現さない。

次第に、クレアが極度の広場恐怖症で、15歳の時から一度も家の外に出たことがないということがわかってくる。
そんな彼女に、潔癖症で人間嫌いの自分を重ね、興味を持ち始めたヴァ―ジルは、隠れて彼女の姿を垣間見、その美しさに心奪われる。仕事仲間の修理屋ロバートのアドバイスに従って、ドレスや花を贈り、少しずつアプローチするヴァ―ジル。次第にクレアもヴァ―ジルに心を開き始めるが、その矢先、彼女は姿を消す。心配のあまりオークションの仕事でも失態を演じるヴァ―ジル。別の隠し部屋に隠れていたことを突き止め、二人は結ばれる。

ある雨の夜、ヴァ―ジルは彼女の家の前で暴漢に襲われる。瀕死のヴァ―ジルを目にしたクレアは、家から飛び出し、周囲に助けを求める。

クレアとの結婚を決意したヴァ―ジルは、次のロンドンでのオークションを最後に、仕事を引退すると表明。しかしロンドンから戻ると、クレアはいなくなっていた。隠し部屋の肖像画も一枚残らず消えていた。

つまりね、ビリーも、クレアも、ロバートもみんなグルだったんですよ。
首謀者はおそらくビリーで、自分の才能を認めてくれないヴァ―ジルを恨んで(高名なヴァ―ジルが売り込んでさえくれれば・・・とか)、ギャフンと(←死語)言わせるために仕組んだ大掛かりなペテン。
クレア自身も偽物で、本当のクレアは、向かいのカフェに住む小人の女性でした。一人で住むには大きすぎるそのヴィラを、よく映画関係者に貸し出していた、というから、ビリーたちも「映画の撮影で」とか何とか言って家具類を持ち込んだのでしょう。偽クレアは、ロバートのガールフレンドの一人で。
友に裏切られ、恋も嘘、秘蔵のコレクションも奪われたヴァ―ジルは廃人同様になって病院に入れられた。かつての部下が郵便物を持ってきても無反応。

続く回想シーンで、ヴァ―ジルは彼女の思い出話にあった、プラハのレストランを訪れます。ウェイターに一人かと聞かれ、未練たっぷりに「連れを待っている――」と答えるのですが、
私は、待ち続け、待ち続けた果てに病院に入るほど心が折れてしまったのだと思ったのですが、

あれはヴァ―ジルの妄想で、妄想の中でクレアを待ち続けている、という解釈もあるようですね。
「顔のない依頼人」の正体を明かすドラマだと思っていたけど、けっこう手の込んだミステリーだったんでびっくり。
最後がわかりにくかったけど・・・。

ところで、トルナトーレ監督の作品って、『マレーナ』や『題名のない子守唄』でもそうでしたけど、なんというか、ブラックですよね。

ウッディ・アレンのほうが、まだ人間に対してあたたかい見方をしている感じがしますね。
トルナトーレ作品=「心打つ感動の物語!」的なイメージがあったので、面喰いましたよ。


公式ホームページ:http://kanteishi.gaga.ne.jp/index.html

DVD『ブルージャスミン』感想

『欲望という名の電車』をウッディ・アレンがリメイク。


 かつてニューヨーク・セレブリティ界の花と謳われたジャスミン。しかし、今や裕福でハンサムな実業家のハルとの結婚生活も資産もすべて失い、心を病んでいた。夫のハルは詐欺まがいの行為で金儲けをしていて、それがバレて逮捕され、服役中に自殺したのだった。そのため、妹のジンジャーを頼ってサンフランシスコにやってきた。
 庶民的なシングルマザーである妹ジンジャーの質素なアパートに身を寄せたジャスミンだったが、ジンジャーの恋人チリとも折り合いが悪く、言い争いばかり。思いつきでインテリア・デザイナーの資格を取ろうとするが、不慣れな仕事と勉強に疲れ果て、精神のバランスを崩してしまう。

 しかし友だちに誘われて行ったパーティで、理想的なエリート外交官の独身男性ドワイトと出会う。ジャスミンは、「外科医の夫を亡くしたばかりのインテリア・デザイナー」と嘘をつき、ドワイトの興味を引く。

ドワイトからプロポーズされるが、指輪を買いに行った店の前でジンジャーの元夫オーギーに偶然出会い、全てを暴露される。オーギーもまたハルの詐欺の被害者で、それがもとでジンジャー夫婦は別れたのだった。

夫の仕事の危うさを知りながら、今の生活を壊したくないから「見て見ぬふり」をしてきたジャスミン。それが夫の浮気を知り、発作的にFBIに電話して自らの手で壊してしまう。
(夫の浮気相手が10代の留学生ということで、自分の養女と結婚したウッディ・アレン自身のことを思い起こしますね。)
お金もなく、学歴も大学中退、仕事を何もしてこなかった女ができることなんてたかが知れている。なのにセレブ気分が抜けきらず、「大学に戻る」だの「下働きなんて死んでもいや」とか、贅沢言ってばかり。
落ちぶれてもブランド品を着続けたジャスミン。新しく服を買うお金がない、というより過去の栄光にしがみつく姿をあらわしているのでしょうね。さすがセレブ、肌の色に映えるセンスの良い服ばかり。とくにパーティのときに着ていた、ベージュのカーディガンがかわいかったな。

ラスト、ドワイトに捨てられ、ジンジャーのアパートからも着の身着のまま飛び出す。大声で独り言を言いながら、これからどうするのか・・・。

ケイト・ブランシェット、セレブのころの輝く笑顔と、落ちぶれて精神的にもヤバくなって目のすわった表情の落差がすごい!
現在のシーンと回想シーンも、この対比があるからごっちゃになることなく見られます。
妹のジンジャーも、姉妹と言っても同じ里親の元で育てられた里子どうし、しかも自分たち夫婦を破産させた姉を、病気だからと受け入れてあげるおおらかさ。男関係もユルいこの女の役を、サリー・ホーキンスが下品になることなく演じて味がありましたね。

「私にふさわしい仕事があるはず」「私がこんな目にあっていいはずがない」と、現実逃避をしてプライドと嘘で完全武装する心境、誰にも覚えがあるはず。行き過ぎると、ジャスミンみたいに自己が崩壊してしまうのでしょう。

語り口は軽妙なんで笑ってみられますが、相当ヘヴィーな話でした。

公式ホームページ:http://blue-jasmine.jp/

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