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カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』感想

『日の名残り』『わたしを離さないで』(←今ドラマでやっていますね)のカズオ・イシグロの十年ぶりの長篇!

忘れられた巨人 [ カズオ・イシグロ ]

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舞台は、アーサー王の死後、土着のブリトン人と海を渡って島の外から来たサクソン人が共存しているブリテン島。世界は霧に覆われ、人々は記憶を長くとどめることができなかった。

ブリトン人のアクセルとベアトリスの老夫婦は、遠い地で暮らす息子に会うため、長年暮らした村を後にする。昔のことが思い出せないまま。

一晩泊めてもらおうと寄ったサクソン人の村では、少年が悪鬼に攫われて大騒ぎしている最中だった。同じく村に立ち寄っていた戦士ウィスタンの活躍で少年エドウィンは救出されたが、その腹には傷ができていた。

「悪鬼に噛まれた者は、そのうち悪鬼になる」と村中が怯える中、老夫婦は村の長老から少年を連れ出してほしいと頼まれる。ウィスタンもそれに賛成だと言い、途中まで同行すると申し出る。

山の中の修道院にいるジョナス医師にベアトリスを診てもらおうと、そちらに向かう途中、アーサー王の甥である老騎士ガウェイン卿に出会う。彼の旅の目的は、雌竜クエリグを退治することだが、実はウィスタンのそれも同じだった。


老夫婦は修道院でジョナス医師に会い、記憶を奪う霧の正体がクエリグの吐く息であると教えてもらう。その夜、一行はウィスタンを追うブレヌス卿に襲撃される。ガウェイン卿に助けられ、エドウィンとともに逃げ出すが、エドウィンはウィスタンを助けに戻ってしまう。


アクセルとベアトリスは、「親を連れていかれた」という女の子から託されて、毒草を食べて育った山羊を連れて、クエリグのいる山に向かっていた。竜に山羊を食べさせて倒そうというのだ。

そこへウィストンとエドウィン、そしてガウェイン卿も現れる。巣穴にいたのは痩せ衰えた竜の姿だった。竜退治と偽って、じつは竜を守ろうとしていたガウェイン卿を倒し、ウィストンが竜にとどめを刺す。


そのときウィストンは理解する。アーサー王の命で魔術師マーリンが竜の息に記憶を奪う魔法をかけたのは、ブリトン人とサクソン人の間に横たわる憎悪と復讐の意志を忘却の彼方に追いやり、平和な世を築くためだった。そのため、ガウェイン卿は竜を守ろうとしたのだと。その竜が倒された今、2つの民族の間に戦いが始まる――。
「かつて地中に葬られ、忘れられていた巨人が動き出します。」

アクセルとベアトリスはウィストンたちと別れ、旅を続ける。霧が晴れ始めた今、アクセルは昔の記憶を―息子がもう死んでいることを思い出す。ベアトリスは「息子はこの近くの島に住んでいる」と言い出し、船頭に向こうへ渡してくれと頼み――。


『日の名残り』が英国執事が出てくる純文学、『私を離さないで』がSF路線で、今度は剣と魔法の世界。
ちょっとびっくりしましたが、イシグロ氏がインタビューの中でこの作品を書いたきっかけについて、1990年代のユーゴスラビア解体に伴って発生した戦争だと語ったという記事を読んで、腑に落ちました。

ボスニアやコソボでは、セルビア人もクロアチア人もムスリムも、異民族が混じりあって生活してしましたが、第2次世界大戦のころは、「民族独立」の名のもとに他民族を憎むように教え込まれてしました。

戦後、共存しているように見えたのは、「共産主義体制」という霧に覆われていただけだったことが、ベルリンの壁崩壊後の、バルカン紛争勃発でわかりました。
こういった問題を生々しくなく描くにはどうしたらいいか。

その答えがファンタジーだったというわけですね。

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