江川卓著『謎とき 罪と罰』
ロシア文学者江川卓氏が、『罪と罰』に秘められた多くの秘密を解説。
この本があったからこそ、文庫本で2冊もある『罪と罰』を終わりまで読めたし、ロシア文学にハマるきっかけになった本。
観劇前に予備知識として読むもよし、観劇後に内容を深掘りするのに読むのもよし、です。
たとえば、
観劇前に予備知識として読むもよし、観劇後に内容を深掘りするのに読むのもよし、です。
たとえば、
主人公の名、ロジオン・ロマーノヴィチ・ラスコリニコフの由来は?
「ロジオン」は洗礼名で、教会暦によると」ギリシャ語の「ロドン(薔薇)」に由来する。
「ロマーノヴィチ」は父称で、父親が「ロマーン」という名であったことを示す。
「ラスコリニコフ」は、17世紀にロシア正教会から分裂した「分離派(ラスコーリニキ)」に由来する。
これくらいならちょっと調べればわかること。謎解きの著者によれば、隠された意味があるという。
イニシャルが全部「R」となるが、ロシア語のR音は「P」で表されるから「PPP」。これを裏返すと、「666」、つまり悪魔の数字になるというのだ。
ドストエフスキーは、きっと「666」を意識して、主人公の名をつけたに違いない、と力説する。
また『罪と罰』のキーワードともいうべき「ラザロの復活」についても、こんな風に解説されている。
ラスコリニコフの母が自分の息子の下宿部屋について、「ここはお棺みたいだ」と評するが、
ここで使われる原語「グロープ」は、ラザロの復活のくだりでも使われている。
ラザロの墓の前に来たイエスがその姉妹マルタに、(墓をふさぐ)石を取り除けるように命じると、マルタは答えた。「主よ、もう臭くなっております。墓(グロープ)に入って4日ですから」
ラザロ=ラスコリニコフであり、ラスコリニコフが最後に「復活」することがここで暗示されている。
・・・という感じに豊富な知識と、ときにこじつけすれすれの推理力で、この作品に秘められた謎を解いていくわけですよ。
ね、わくわくするでしょ?読むしかないでしょ?
『白痴』や『カラマーゾフの兄弟』など他の「謎とき」シリーズも面白いのでぜひ読んでみてください。
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