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映画『希望の灯り』感想

『ありがとう、トニ・エルドマン』でキャリアウーマンだった彼女が、本作ではしがないパート主婦で登場。

 


 

 

旧東独地域のライプツィヒ郊外にある巨大スーパーマーケットで、在庫管理係として採用された無口な青年クリスティアン。

飲料担当のブルーノに、仕事のことやフォークリフトの操縦を教わりながら少しづつ職場に慣れていく。

スーパーのある場所は、統一前は長距離トラックの配送センターで、ブルーノやほかのスーパーの仲間たちもトラックの運転手だった。
スーパーになった後も彼らはそこに残り、今ではトラックではなくてフォークリフトを乗り回す毎日だった。

ある日クリスティアンは休憩所で、従業員仲間の年上の女性マリオンと言葉を交わす。一目で恋に堕ちるが、彼女には夫がいた。落ち込み、昔の悪い仲間たちと酒をあおって、翌日遅刻してブルーノに注意される。

クリスマスの夜、スーパーでは、倉庫の裏で従業員たちが集まってささやかなパーティをしていた。そこに顔を出すマリオン。二人は寄り添いながら、クリスティアンが以前は建設現場で働いていたことなどを話す。

年開けて、なんだかマリオンがよそよそしい。「俺のせい・・・?」「なんでも自分に関係あると思わないで!」
しばらくして、マリオンの姿がスーパーから消えた。病気で休んでいるらしい。ブルーノから、彼女が夫から大切にされていないこと、手をあげられることもあると聞き、こっそり見舞に行く。
しばらくしてマリオンが復帰する。彼女は、こっそり来た人物が誰かわかっていた。

仕事帰り、クリスティアンはブルーノに自宅に飲みに誘われる。高速沿いの家に一人で住んでいた。通り過ぎるトラックを目の当たりにしながら、「トラックが懐かしい・・・」とブルーノは泣いた。

後日クリスティアンは、ブルーノが首を吊って命を絶ったことを知らされる。

 

折りしも今年は壁崩壊(Der Maurfall)を迎えて30周年ですが、西部と東部では今でも経済格差があり、DDR時代を懐かしむ人は少なくないようです。(東(Ost)と郷愁(Nostalgy)をかけて、「オスタルジーOstalgy」という言い方があるくらいです。)

ブルーノもこのオスタルジーに囚われ、将来を悲観して自殺したのでしょう。

クリスティアンは、普段長袖の服で隠していますが、手首の先までタトゥーをいれています。それを見てブルーノは、クリスティアンが刑務所にいたことを見抜くのですが、私も以前見た『イースタン・プロミス』という映画で、ロシアのどこの刑務所にいたのかがタトゥーの柄でわかる、というエピソードがあったので、最初からそれに気づきましたね(笑)。

ならず者だった彼が、父親のような年の同僚たちに受け入れられ、仕事も覚えてフォークリフトの試験にも合格し、スーパーのバックヤードに居場所を見つけた。好意を寄せる女性もいて、笑い返してくれる。このささやかな「幸せ」を、観客はクリスティアンとともにかみしめる。

ブルーノの自死という悲しい出来事はあったけれど、それでも日々は過ぎていく。スーパーにともる灯りは、生きるための「希望の灯り」なのだ。

 

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