映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』感想
1980年5月に韓国の光州で起こった民衆蜂起をもとに描いた作品。
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東京で特派員をしていたドイツ人ジャーナリスト・ピーターは、記者クラブである記者が「韓国で政府が戒厳令を敷き、現地の知人と連絡がとれない」というのを聞き、スクープの匂いを嗅ぎつけソウルに飛ぶ。
韓国では全斗煥率いる軍部がクーデターにより実権を掌握。民主化を求める市民はデモを行っていた。
タクシー運転手のマンソプは、報酬の10万ウォンにつられてピーターを光州まで送り届けることに。
軍の検問も何とか胡麻化して光州の街に入るとデモの真っ最中だった。ピーターは学生のジェシクの助けを借りて取材を始める。「光州がこんな危険な状態だとわかっていて連れてこさせるなんて、記者だなんて、俺を騙したな・・・!」ときな臭さを感じたマンソプは、ピーターを置いてトンズラしようとするが、そうこうしているうちに帰るチャンスをなくし、車も故障してしまったので、タクシー運転手のファンの家に世話になる。
ついにデモを行う市民と軍隊が衝突。軍が市民に銃口をむけ、次々に市民が銃弾に倒れる。
一旦はソウルに置いてきた娘のことが心配でピーターを置いて戻ろうとした
マンソプだったが、「光州の人たちを見捨てて帰れない」とばかりに引き返す。病院に行くとジェシクの亡骸のそばで茫然とするピーターをしかり飛ばし、カメラを回すように言った。そして光州のタクシー運転手たちと一緒に、重傷を負った市民を病院に運んだ。ピーターをこの惨劇の一部始終をカメラに収めた。
ファンからソウルへ戻る裏道を教えてもらい、「必ず光州の現状を世界に伝えて」と堅く頼まれる。
やはり検問で捕まるが、タクシー運転手仲間が妨害して逃がしてくれたため、無事に空港にたどり着けた。
別れ際にピーターは名前と連絡先を尋ねるが、巻き込まれるのを恐れたマンソプは嘘を教えた。
ピーターの撮影した映像は世界中に報道され、韓国の独裁政権の実態を世に知らしめた。
ピーターは帰国後連絡を取ろうとするが、偽名だったため、それはかなわなかった。
2003年、ピーターは韓国から賞を贈られ、韓国を訪れていた。スピーチの中で「そのときのタクシー運転手との再会を望んでいる」と言ったことを新聞の記事で知ったマンソプは、人知れず涙を浮かべるのだった。
最後にピーターさん本人が出てきましたね。結局タクシー運転手は名乗り出ず、再会はなかったようです。ただ、本作品公開後に、本人の息子さんが「それは父」と名乗り出たらしいです。
ドイツ人記者ピーター役はトーマス・クレッチュマンでしたが、渋オジになっていましたね。そういや最近何に出たんだろ、とネットで調べたらインスタグラムやってて、見てみたらアートな写真をいっぱい投稿してましたね。ベルリンのアートスポットのTachelesで短編映画上映したようだし、そっち方面に行ったか~。
日本で自衛隊や警察が国民に銃口を向けるなんてありえないことに思えるけど、世界にはそんな例はごまんとある。(今まさにアメリカでそういうことが起こっている)
政治に無関心なマンソプが光州の人たちのために立ち上がったのと同じことができるかどうか、自信はない。
光州事件というハードな題材でしたが、ドイツ人記者とタクシー運転手の友情を描いてちょっとだけ心温まる映画でした。
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