映画『華氏119』感想
アメリカは今大統領選の真っただ中ですね。日本でも新しい自民党総裁、つまり総理大臣が決まったばかりですが・・・。
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あんな男が大統領になるわけなんかない。誰もがそう思っていた。
だが2016年11月9日、当選者として発表されたのは、ヒラリー・クリントンではなく、「あり得ない」はずのドナルド・トランプだった。
あれから4年、アメリカは彼の支持層である富裕層に有利な政策を推し進め、弱者は切り捨てた。アメリカの原点であったはずの民主主義は、いまや風前の灯火だった。
その一つの例として、ムーアの故郷ミシガンの水道利権問題を取り上げる。
トランプの古くからの友人であるスナイダーという大富豪が、2010年、ミシガン州の知事に就任した。知事は、緊急事態を宣言して市政府から権限を奪い、さらに金儲けのために、黒人が多く住むフリントという街に民営の水道を開設する。しかしこの水に鉛が混じっており、人々は鉛中毒に苦しむ。知事は頑として問題を隠蔽し続けた。
映画は、支持率が低いはずのトランプがなぜ当選したか、労働者や若者から票を集めたバーニー・サンダースではなくてヒラリーを民主党の候補者に据えたからくりを紐解いていく。そこには複雑な選挙制度が絡んでいた。
とはいえ、腐敗した権力と闘うために、立ち上がった人たちもいる。
フリントの汚染水問題に抗議する地域住民、ウエストバージニア州で教師の低賃金に抗議するために決行されたスト、フロリダ州パークランドの高校銃乱射事件で生き残った高校生エマ・ゴンザレスの銃規制への訴え──。
最後にムーアは、今のアメリカが戦前のドイツに似ていることを指摘し、ヒトラーの映像とトランプの演説をオーバーラップさせる。
トランプは今、再選を目指して突っ走っている。民主主義を、生きる権利を守るため、未来のため、しなければいけないことは──
単にトランプ政権のヤバさを暴く映画と思いきや、アメリカの民主主義そのものが崖っぷちに立っていると訴えかける映画でした。
ヒトラーとトランプのオーバーラップは、手法として陳腐かもしれないけれど、おそろしいほど違和感がなかったですね。
映画としては、いろんなエピソードを盛り込んだため、散漫な、というか、切れ味が悪い印象を受けました。
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