ドイツの流行語大賞 Wort des Jahres 2020
2020年は、コロナに支配された年でした。日本の流行語大賞は「3密」をトップにコロナ関連の用語がいくつもランクインしましたが、ドイツでも納得の言葉が選ばれました。
Gesellschaft fur deutsche Sprache(GfdS:ドイツ語協会)ではその年に流行った言葉、「流行語大賞 (Wort des Jahres)」をリサーチし、その結果を“Der Sprachdienst”という雑誌に公表しています。
2019 ‟Respektrente(読み:レスペクトレンテ)”に続き、"Corona-Pandemie(読み:コロナ-パンデミー)"が2020年の流行語大賞に選ばれました。
順位は以下の通り。参照したGfdSのWort des Jahresのページ : https://gfds.de/wort-des-jahres-2020-1/
Die Wörter des Jahres 2020
1 Corona-Pandemie(読み:コロナ-パンデミー)
Pandemie は英語の pandemic(パンデミック)。“感染爆発”などと訳され、感染症や伝染病が全国的・世界的に大流行し、非常に多くの感染者や患者を発生することですが、新型コロナウィルス感染症の流行で、11月時点で世界で150万人の死者が出ました。
2 Lockdown(読み:ロックダウン)
都市封鎖。会社、ホテル、商店はもちろん、学校も休校になりました。
3 Verschwörungserzählung(読み:フェアシュヴェールングスエアツェールング)
直訳するとVerschwörung(陰謀)をerzählung(語ること)。コロナ陰謀論や、米大統領選での不正があったと唱える「Qアノン」や右派ポピュリストの陰謀論が巷に溢れています。もともとVerschwörungstheorie(読み:フェアシュヴェールングステオリー、陰謀論)という言葉があったのですが、Theorie「論」と呼ぶまでもない、科学的に、論理的に証明できないような世迷い言を指すということでしょうか。
4 Black Lives Matter(読み:ブラック ライヴス マター)
アフリカ系アメリカ人に対する警察の残虐行為をきっかけにアメリカで始まった人種差別抗議運動のこと。ドイツもトルコをはじめ移民の多い国でもあることから、人種差別についての議論が高まりました。
5 AHA(読み:アー・ハー・アー)
コロナ禍におけるドイツ版「新しい生活様式」といえる、「Abstand, Hygiene, Alltagsmaske」の頭文字を指します。
Abstand(アプシュタント):距離
Hygiene(ヒュギーネ) :衛生
Alltagsmaske(アルタークスマスケ):毎日マスク
最低でも1.5mの距離をとり、定期的に手を洗い、口と鼻を覆うものを着用すること。屋内では、これにLuft(換気)が加わってAHALになります。
6 systemrelevant(読み:ズィステームレレヴァント)
直訳すると、system(システムに)relevant(関連している)。
ロックダウンでも自宅に留まることができない、これらの動きを止めると社会の動きが止まる。金融、警察、消防などの公的なインフラ、または医療福祉、清掃業、スーパーやドラックストアなどの小売業などの、いわゆるエッセンシャルワーク(ワーカー)のことです。
7 Triage(読み:トリアーゲ)
フランス語で「選別」を意味するtrierに起源を持つ医学用語。大量の患者が発生した場合、治療する順番に優先順位をつけること。コロナ禍でも、人工呼吸器などの医療資源の配分を巡り、優先順位が低いと判断された人々が切り捨てられる可能性があるということで話題に。
8 Geisterspiele(読み:ガイスターシュピーレ)
直訳するとGeister幽霊+spiele(ゲーム、試合)。スポーツイベント、特にサッカーで無密集を避けるために無観客試合が行われました。
9 Gendersternchen(読み:ゲンダーシュテルンヒェン)
ドイツ語では、職業などを表す言葉はたいてい男性形で、女性を表すときは、語尾に-inをつけます。
Arbeiter(アルバイター:労働者)→ Arbeiterin(アルバイテリン:女性労働者)
Lehrer (レーラー:教師)→ Lehrerin(レーレリン:女教師)
しかし、性の多様化を考慮して、アスタリスクを挟んで
Arbeiter*innen とか Lehrer*innen とかいうふうに表記しようという議論がなされています。
このアスタリスクをGendersternchenと呼んでいます。
10 Bleiben Sie gesund!(読み:ブライベン ジー ゲズント)
直訳すると「健康でいてください」。手紙などで最後に“Mit freundlichen Grüßen”(ミット フロイントリッヒェン グリューセン:親愛なる挨拶とともに)と書く代わりに、この言葉が公式の別れの挨拶となりました。コロナ時代ならではの挨拶といえましょう。
国内でのコロナ感染者も4,500人を超え、緊急事態宣言が再び発令されるかどうかという状況です。
それでもコロナが終息し、いつかまたベルリンを訪れることを夢見て、2021年を迎えたいと思います。
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