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2024年8月

夏休み文楽特別公演第三部『女殺油地獄』感想

借金をこさえた放蕩息子が、顔見知りの女性を殺して金品を奪う、という身もふたもない話。享保6年(1721年)に起こった殺人事件を元に書き起こされ、事件の2か月後に上演されました。当時の文楽とか歌舞伎は、再現ドラマとか、ワイドショー的なものでもあったのですね。(引用画像は、例によって配信されたものからのスクショです。)


〈徳庵堤の段〉

 河内屋の与兵衛は、馴染みの遊女が別の客と野崎参りに出かけたのに腹をたて、野崎観音の門前で待ち伏せる。遊女の客と喧嘩になり、泥をぶつけあううち、与兵衛は通りかかった侍に誤って泥をかけてしまう。その侍に仕える与兵衛の伯父は、無礼に怒って甥を切り捨てようとするが、侍はこれを止める。

 泥だらけの与兵衛は、そのままの格好で逃げることも出来ず、通りかかった豊島屋のお吉を頼って身なりを整える。河内屋と豊島屋は油を商う同業者で、与兵衛は姉のようなお吉に懐いていた。

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〈河内屋内の段〉

 河内屋の主人・徳兵衛(とくべえ)は、与兵衛にとって実の父ではなく、実父の死後、母のおさわが河内屋の使用人であった徳兵衛と夫婦になったのだった。しかし与兵衛は病床の妹を言いくるめ、実父が憑りついたことにして徳兵衛に家督を与兵衛に譲るように迫る。
徳兵衛はかつての主人の子である与兵衛に遠慮していたが、母親にまで手をあげる姿を見てさすがに看過できず、ついに与兵衛を勘当し河内屋を追い出す。

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〈豊島屋油店の段〉

 徳兵衛は家を追い出された与兵衛を心配し、「きっと頼ってくるはず」と豊島屋のお吉に与兵衛への金を託しに来る。続いて、母のおさわも同様に金を携えてやってきた。その様子を物陰から立ち聞きし、親の心を知った与兵衛は、何としても借金を返済しようと決意する。


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 素知らぬ顔して豊島屋に現れた与兵衛に、お吉は預かった銭を渡すが、借金返済の額には到底足りない。与兵衛はお吉に金を貸してくれるよう頼むが、お吉は「夫が留守でいないのにそれはできない」と拒否。他に金策の当てがない与兵衛は、お吉を殺して金を奪おうと、隠し持っていた刀で何度も切りつける。

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逃げ回るお吉は売り物の油をこぼす。血と油に滑りつつ、与兵衛はお吉にとどめを刺し、金を盗んでその場を立ち去る。

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暗闇の中、斬りつけた方も斬りつけられた方も、油で滑って這いずり廻る地獄絵図。ぬるぬると滑る様子が妙にリアル。(与兵衛の足がとんでもないところから生えているように見えるのはご愛敬。)
最初は「心を入れ替えて、親孝行するからお金を貸して」としおらしいことを言っていたが、次第に「俺の親孝行のために死ね」と盗人猛々しいことを言い放つ与兵衛が、本当に憎たらしい。

与兵衛には兄がいて、その子もまだ跡をとれるほど大きくなかったから、店を守るために母親がかつて使用人だった男と再婚したのでしょうけど、子どもにしたら嫌でしょうね。もしかしたらこれが与兵衛がグレた原因かもしれませんね。それが負い目となって母も義父も甘やかした結果がこれだったとしたら、巻き込まれたお吉が浮かばれない・・・。

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夏休み文楽特別公演 第二部 感想

第2部は「生写朝顔話」。上村松園に「娘深雪」という作品があって、「可憐な娘」ってイメージしかなかったのですが・・・。(写真は配信のスクショです。)

 

宇治で蛍狩りをしていた阿曽次郎は、浪人に絡まれたところを助けてやったことがきっかけで、秋月弓之助の娘・深雪と知り合う。
しかしお国の大事で急ぎ帰国せざるをえなくなった阿曽次郎は、別れ際に「露のひぬ間の朝顔に、照らす日かげのつれなきに、哀れ一むら雨のはらはらと降れかし」との唱歌を深雪の扇にしたためる。

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秋月家の方も、国元の芸州への帰国しなければならなくなる。悪天候のため停泊していた明石で、想い人を想って「朝顔」の唄を歌っていたところ、たまたま近くで小舟に乗っていた阿曾次郎がその歌声に気づく。深雪は小舟に乗り移り、「離れたくない、連れて行ってもらえないのならばここで身を投げる」と懇願し、阿曾次郎も連れていく決心をする。深雪が書置きを残しておこうと元の船に戻ったとたん、船が動き出し、二人は離れ離れになる。深雪は朝顔の唱歌の扇を阿曽次郎の小舟に投げ入れる。

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深雪には、大内家の家臣駒沢次郎左衛門との縁談が起こり、これを嫌った深雪は家出をするが、実は駒沢次郎左衛門こそ、駒沢の家を継いだ阿曽次郎その人。そうと知らぬ深雪は、流浪の果てに盲目の乞食の身となる。

島田宿の戎屋徳右衛門方に、岩代多喜太と共に投宿した駒沢阿曾次郎。実はお家乗っ取りを企んでいる岩代は、なんとか阿曾次郎を始末したいと思っている。怪しげな医者の萩野祐仙に指示し、お茶をたてる茶釜の中にしびれ薬を入れさせる。それを陰でこっそり見ていた徳右衛門が機転を利かせて茶釜を取り換える。
「お茶に気を付けるように」と徳右衛門が阿曾次郎に言っているのを聞いて、「疑いをかけられた」と岩代、祐仙が怒り出す。先に解毒薬を飲んでいた祐仙は、「自分が先に飲んでみせる。何ともなかったらただでは済まさない」と言って点てた茶を飲む。しかし入っていたのは笑い薬。笑い転げる祐仙を前に、何も知らない岩代は怒り、その場を去る。

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阿曾次郎は部屋に貼ってあった朝顔の唄に胸騒ぎを覚え、朝顔の唄で評判の瞽女がいると聞き、その瞽女を招く。身の上話を聞くと、やはりそれが深雪であった。とはいえ岩代の手前、名乗ることもできず、深雪も意中の人が目の前にいるのに盲目のために気づかない。

阿曾次郎は、朝顔の扇と眼病の薬を徳右衛門に託して旅立つ。

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駒沢が阿曽次郎であったことを知った深雪は、あわてて後を追いかけるが、大井川の川止めに阻まれてしまう。

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そこへ徳右衛門がやってきて、自分が秋月家ゆかりの者であり、阿曾次郎が残した薬を甲子の年生まれの男である自分の生き血と合わせて飲めば目が治るといい腹を切る。それによって深雪の目も見えるようになる。

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宇治川のほとりで出会った男女が、運命のいたずらですれ違う悲恋なのですが、ちょっと女の方が思い込み激しくて怖いな、という話でした。

 

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夏休み文楽特別公演第一部を配信で見ました。

8月の夏休み文楽特別公演が行われました。が、そうしょっちゅう大阪に行っている余裕はないので、今回は配信で楽しみました。

第一部は、夏休みということで、子どもさんでも楽しめる作品が並びました。(掲載した写真は、配信からのスクショです。)

 

「ひょうたん池の大なまず」

ひょうたん池に住む大なまずは、エサだけかっさらい誰も釣り上げたことのない池の主。今日こそは、と意気込む権兵衛さんだが・・・。トムとジェリーよろしく、権兵衛さんと大なまずが大立ち回りを演じるユーモラスな作品。作者はなんと、人形遣いで人間国宝の桐竹勘十郎さん。アニメとのコラボとかやったり、新しいことにも意欲的な方という印象ですが、新作の脚本までお書きになるとは!

舞台の左側が水面の上、右側が水面下。大なまずが本物みたいなゆうゆうとした動きで泳いでました。

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調子に乗って釣り上げられるも、暴れて逃げようとする大なまず。

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まんまと逃げおおせる大なまず。

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「文楽ってなあに?」

人形遣いの吉田蓑太郎さんを司会に文楽の人形について解説。文楽の人形は3人がかりで操作するのですが、「かしら(頭部)」と右手を担当する面遣い(おもづかい)の合図に合わせて、「左遣い(左手担当)」と「足遣い(足担当)」が動きます。もし合図を出さなかったら・・・左手が動かないのを「なんで?」とばかりに振り返る人形の動きが面白かったです。

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女の人形の場合、足がないので「足遣い」が着物の裾の部分をつかんでそれらしく動かすのですが、前が見えないなかそれらしく動かすのも大変だろうな。最近、足の動きにも注目しています。

 

「西遊記(さいゆうき)」


 三蔵法師と悟空が出会う「五行山の段」と山奥の一軒家で妖怪に襲われる「一つ家の段」を上演。

岩に閉じ込められた悟空の封印を三蔵法師が解く。二人は天竺を目指す。

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旅の途中、三蔵法師は山奥の一軒家に泊めてもらうが、そこの老婆に毒を盛られてしまう。老婆はそうやって旅人を殺し金品を奪っていたのだ。

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苦しむ三蔵、しかしそれは悟空が変身したものだったのだ。あっという間に老婆を成敗する悟空。Photo_20240817224704

そこへ老婆の甥の猪悟八がやってきて悟空に襲いかかるが、あっという間に返り討ちにする。

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この家の娘・芙蓉は三蔵にここに留まるようにいうが、三蔵がそれを断ると、怒りで本性を現す。

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彼女の正体は、紅い髪で身体は銀のうろこの蛇の妖怪・銀角だった。

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悟空は、毛を抜いてつくった分身を使って応戦する。

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最後は宙づりになって「土蜘蛛」みたいに糸を出す、ど派手で楽しい演出でした。

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8/20から2回目の配信が始まります。ご興味のある方はぜひぜひご覧ください。(3回目は8/27」から)

 

 

 

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クラウドファンディングで「SUWA×文楽2024|物語の舞台・諏訪湖に捧げる待望の無料公演へ」を支援しました

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諏訪大明神や諏訪湖にゆかりの演目『本朝廿四孝 奥庭狐火の段』を物語の舞台で上演する、というプロジェクトがありまして、

3回目になる今年は無料公演にて開催することになったそうです。助成金を活用するそうですが、その不足分をクラウドファンディングで補おうとのこと。

ささやかですが、私も支援させていただきました。実際に現地へ行くとなると、これ以上のお金がかかるし、こういう形で応援するのもいいかな~、と。


『本朝廿四孝』は越後の上杉謙信と甲斐の武田信玄の宿命の対決として名高い川中島の合戦を描いた作品で、 中でも有名な『奥庭狐火の段』では、謙信の娘・八重垣姫と敵方の武田勝頼との悲恋が描かれています。勝頼の危機を察知した八重垣姫が「翅(つばさ)が欲しい、羽が欲しい、飛んでいきたい、知らせたい」と願い、諏訪大明神が遣わした狐とともに諏訪湖を渡る。
この場面を物語の舞台となった諏訪湖でやる・・・ロマンですね~


プロジェクトの締め切りは8月23日なので、ちょっとでも興味のある方は下記のサイトをご覧ください。

https://readyfor.jp/projects/suwabunraku?sns_share_token=7278358bd2ad8ff5ee2c&utm_source=pj_share_url&utm_medium=social

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「ポンダル」を買いました。

横浜高島屋の着物売り場を通りかかったら、サンダルのような草履のような楽そうな履物が紹介されていて。

Nippon(ニッポン) + Sandals(サンダル) で「ポンダル」。


履物屋の「はな壱」さんがつくった「ポンダル」は、スニーカーの靴底に使われるような、軽くてクッション性の高いEVA素材を台に使用し、鼻緒がカラフルで目にも楽しく、しかも痛くないようにすげてあります。そう、サンダルと草履のいいとこどりをしたような履物なのです。

「浴衣に合わせる方もいらっしゃいますよ」と店員さんは言っていましたが、私が合わせるなら紬だし、紬でもちょっとカジュアルすぎるかな?とは思いましたが、面白そうなので試しに買ってみました。

 

台はブラック、鼻緒は十日町紬の生地を選びました。

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履いて歩いてみた感想は、鼻緒が食い込むことなくて痛くない、というのと、
ピーチサンダルはだいたい平べったくて歩くとその都度足裏から離れて歩きにくいんですけど、これは厚みがあって傾斜があって、なおかつ鼻緒じたいも厚みがあって足にフィットするので、思っていた以上に歩きやすかったです。


この夏はこのポンダルを履きつぶそうと思います。

 

公式ホームページ:http://hanao-hanaichi.com/pondals/

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抹茶色の単衣

リサイクルショップで抹茶色の単衣を買いました。琉球柄っぽくて、緑色。これは珍しい。

さっそく手持ちの帯を合わせてみました。


水色の夏帯。涼しげでばっちりですね。

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オーソドックスなクリーム色の塩瀬。悪くない。

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20代のときに買ったけど、「若い人には地味ね~。あなたには50年早い」と言われたベージュの帯。
刺繍で描いた花がかわいい。これもドンピシャ。

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この暑さだから10月前半までいけるかな。帯を替えて2回は着たいですね。

 

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横浜三渓園の蓮

久しぶりに、三渓園の蓮を見に行ってきました。

朝の9時ですでに焦げそうな暑さ。庭園の草木も干上がっているというか立ち枯れている個所も。

強い陽射しに葉の緑色と蓮の花の薄紅色が映えて、極楽浄土のような景色でした。

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朝ごはんに「待春軒」の朝ごはんセットをいただきました。

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展望台(松風閣)からの眺め。今は工場地帯だけど、昔は一面海って感じで眺めがよかったんでしょうね。

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今は「ぶらり三渓園バス」という横浜駅まで2,3か所しか止まらない遊覧バスが出ているのね。
行きやすくなったし、今度は秋の紅葉でも見に来ようかしら。

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