いみじくも作中人物が言ったように、「みんな100歳老人の話なら何でも好きだもの」。最近元気な高齢者が主人公という物語が流行っていますね。
やっぱりこの激動の20世紀の出来事に絡ませることができるし、100歳まで元気に生きている人は、最近珍しくないから・・・。
自伝を書き始めたローズは1通の訃報を受け取る。その人、レナーテ・フルルなる女性に、ローズは心当たりがあった・・・。近所の少年に頼んで、その女性のことを調べてもらう。
1915年、黒海沿岸で生まれたローズは、8歳のときアルメニア人大虐殺で家族を皆殺しにされ、トルコのベイ(長官)に献上される。美しく成長したローズは、大商人に売られ、船でマルセイユへ。
マルセイユに到着後、船から逃げ出し、農民のランプール夫妻に保護される。
しかし幸福も長くは続かなかった。13歳のとき、夫妻が相次いで死に、ローズの後見人として農場に乗り込んできた甥の夫婦に奴隷のようにこき使われた。
羊の去勢の仕事で農場を訪れたガブリエルと運命的に出会い、駆け落ちしてパリへ。
祖母やランプール夫人に教わった料理をもとにレストランを開き、二人の子供にも恵まれた。
しかし自分を不幸のどん底に落とした人物たちへの復讐の想いやまず、旅行と称して出かけては、人知れず始末してきた。
1930年代、フランスでも反ユダヤの機運が高まっていた。ガブリエルは、論敵ラヴィスに、自分でも知らなかったユダヤ人だという出自を暴き立てられた。
また、ローズの浮気がばれたことにより、ガブリエルは子どもたちを連れてローズのもとを去った。
1940年、パリはナチス・ドイツの占領下にあった。そしてどういうわけだか、ナチス高官のハインリヒ・ヒムラーがローズの店を訪れた。
ローズの金髪碧眼の美貌と料理の腕、そして彼女のつくる活力の出る錠剤に惚れ込んだヒムラーは、自分のもとに来るように誘う。
1942年7月、パリではユダヤ人が一斉検挙され、ガブリエルと子供たちも冬季競輪場に連行された。彼らを助け出そうと、ヒムラーと連絡を取り、ローズはベルリンへ降り立った。
調査の間、ローズは「料理人」としてヒムラーのもとで暮らすことになったが、ヒムラーは手を出してくることはなかった。
そのうち軍の仕事を任されるようになり、ヒトラーのディナーを作りにベルヒテスガルテンに呼び出されることになった。
ローズの料理を総統は気に入ったが、その夜、酔わされたローズは何者かに乱暴された。
数か月後、ローズは自分が妊娠していることに気づく。ヒムラーの計らいで、生まれた女の子は「レーベンスボルン」に預けられた。そしてローズはパリに戻された。
調査の結果、やはりレナーテ・フルルは、このとき生まれた娘だったことがわかる。
夫と子供の死を知り、ラヴィスに復讐したローズは、アメリカに高跳びする。アメリカ人のフランキーと結婚したが、数年後、2度目の夫は心臓発作で死亡した。
1955年、パリ時代に知り合ったサルトルとボーヴォワールに
誘われ、中国へ。そこで12歳年下の柳と出会い、結婚する。しかし毛沢東と鄧小平の権力争いの最中、1968年に殺された。
再びマルセイユに戻ったローズは、マリ人の女の子カディと同棲する。そしてカディが生んだ娘と暮らして、現代にいたる。
今日はローズの誕生日。お祝いをしに、みんなが集まってくる・・・。
過激なオバアちゃんだな~。
105歳になった今でも厨房に立ち、出会い系サイトで相手を物色したり、拳銃でチンピラを脅したりしてるし。
「窓から逃げた100歳老人」でもそうでしたが、この手の話の主人公って、中国に行って世界一周して帰ってきますね。
特にフランスでは、1950年代にサルトルをはじめとする知識人がこぞって共産主義に走ったことから、この20世紀を語るうえではずせないトレンドなのでしょう。
原題は『 La cuisiniere d'Himmler (ヒムラーの料理女)』。日本版では、「愛と笑いと復讐の力を信じてる」というプロローグの中の言葉をクローズアップしていますね。(題名で全部説明しようって感じで、あまりセンスを感じないけど。)
ついでにドイツ版はというと、『Ein Diktator zum Dessert(独裁者にデザートを)』
切り口によって、同じ物語なのに印象が違うのが面白いですね。
ちなみにローズがヒトラーのためにつくったデザートは、リンゴのタルトでした。
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