書籍・雑誌

ジャスティナ・ブレイクニー著『ボヘミアンスタイルのインテリア 心がときめく、自分らしい部屋のつくり方』感想

インスタグラムで、インテリア関係の投稿を見ていていたら海外のショップだけど、とても好みのインテリアを見つけました。

「BOHO」スタイルというらしいのですが、

「BOHO」は「放浪する人」や「民俗的な」という意味の「ボヘミアン」という言葉と、ニューヨークのアーティスティックなエリア「SOHO(ソーホー)」とを掛け合わせた造語だそうです。
エスニックなモチーフや異素材をカラフルにミックスするのがBOHOインテリアの特徴。
かわいくてカラフルな色遣いで、観葉植物もふんだんに取り入れて、というミニマリズムとは対極にあるお部屋。


Justina Blakeney という人がデザイナーなんですが、その人の著書の日本語版が出ていたので衝動買い。

 


 

 

本書では、

まずお掃除したり、日の光を入れてクリアな状態にする
 ↓
どんな部屋にしたいか考える
 ↓
動線を考える、流れをつくる
 ↓
いくつかの設問に答えて自分が惹かれる環境を知り、それに合わせたコーディネートを考える

大雑把に言うと、こういうステップを経て自分が本当にリラックスできる空間をつくりましょう、という提案をしています。

私は、「ジャングル」でしたね。

「ありとあらゆる種類の緑を使い、ところどころに黄色、オレンジ、ピンク、赤などの派手な差し色を加えます。」

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(P111より)



はやりの「男前インテリア」(鉄と木でできた家具とかでコーディネートした、いわゆる「ブルックリンスタイル」)も好きだけど
こういうお部屋にしたいな~、とページをめくるだけでも
テンションが上がるので買って損はなかったです。


ショップのアドレス:https://www.jungalow.com/

インスタグラム:https://www.instagram.com/thejungalow/

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この鏡・・・欲しすぎる・・・・

海外発送しているそうですが、さすがにそこまでする勇気はないので、日本で似たようなの探します・・・。

 

 

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江川卓著『謎とき 罪と罰』

ロシア文学者江川卓氏が、『罪と罰』に秘められた多くの秘密を解説。
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謎とき『罪と罰』 (新潮選書) [ 江川卓 ]
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この本があったからこそ、文庫本で2冊もある『罪と罰』を終わりまで読めたし、ロシア文学にハマるきっかけになった本。

観劇前に予備知識として読むもよし、観劇後に内容を深掘りするのに読むのもよし、です。



たとえば、
主人公の名、ロジオン・ロマーノヴィチ・ラスコリニコフの由来は?
「ロジオン」は洗礼名で、教会暦によると」ギリシャ語の「ロドン(薔薇)」に由来する。
「ロマーノヴィチ」は父称で、父親が「ロマーン」という名であったことを示す。
「ラスコリニコフ」は、17世紀にロシア正教会から分裂した「分離派(ラスコーリニキ)」に由来する。
これくらいならちょっと調べればわかること。謎解きの著者によれば、隠された意味があるという。
イニシャルが全部「R」となるが、ロシア語のR音は「P」で表されるから「PPP」。これを裏返すと、「666」、つまり悪魔の数字になるというのだ。
ドストエフスキーは、きっと「666」を意識して、主人公の名をつけたに違いない、と力説する。

また『罪と罰』のキーワードともいうべき「ラザロの復活」についても、こんな風に解説されている。
ラスコリニコフの母が自分の息子の下宿部屋について、「ここはお棺みたいだ」と評するが、
ここで使われる原語「グロープ」は、ラザロの復活のくだりでも使われている。
ラザロの墓の前に来たイエスがその姉妹マルタに、(墓をふさぐ)石を取り除けるように命じると、マルタは答えた。「主よ、もう臭くなっております。墓(グロープ)に入って4日ですから」
ラザロ=ラスコリニコフであり、ラスコリニコフが最後に「復活」することがここで暗示されている。

・・・という感じに豊富な知識と、ときにこじつけすれすれの推理力で、この作品に秘められた謎を解いていくわけですよ。
ね、わくわくするでしょ?読むしかないでしょ?
『白痴』や『カラマーゾフの兄弟』など他の「謎とき」シリーズも面白いのでぜひ読んでみてください。

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ベルンハルト・シュリンク著『階段を下りる女』感想


語り手の「ぼく」はドイツ在住の弁護士。仕事のために訪れたシドニーのアートギャラリーで階段を下りる女の絵を発見する。

それは40年前、グントラッハという富豪の男が若い妻イレーネをモデルに描かせた絵で、後にイレーネは画家シュヴィントのもとに走る。
腹いせにグントラッハはその絵を傷つけてはシュヴィントに修復させる。そんなことの繰り返しに音を上げたシュヴントは、絵と引き換えにイレーネを返す契約に同意する。
イレーネに恋をした「ぼく」はそのことを彼女に教え、逃げる手伝いをする。一緒に逃げるつもりだったが、彼女は一人で消えてしまった――。


「ぼく」はドイツに帰らず、イレーネを探す。彼女がオーストラリアのある島で不法滞在していることが判明し、すぐその場所へ飛ぶが、彼女は「ぼく」が来たことは意外だったようで、「ぼく」のことはほとんど覚えていなかった。
イレーネはがんで余命いくばくもないことから、死ぬ前にグントラッハやシュヴィントに会うためにあの絵を展示した、と語った。
ほどなくして2人はやってきたが、彼らの興味はもはやイレーネにはなく、あの絵の所有権についてであり、すぐに2人は去っていった。
残されたイレーネは、「もし二人で逃げていたら、どんな人生だったか」という想像の話を「ぼく」にせがんだ。

そんなある日、近所で山火事が起こる。イレーネを乗せて「ぼく」は船で沖に出る。しかし目を離したすきにイレーネはまた消えてしまっていた――。


イレーネがグントラッハやシュヴィントのもとから逃げ出した理由は、「戦利品としての妻」や、「画家にとってのミューズ」という与えられた役割を生きるのではなく、自分自身の生を生きたかっただけ。
死を前に彼らに会おうと思ったのも、それを確認したかったから。
自分にも消えた理由を聞く権利があるとやってきた「ぼく」は、彼女にとってピエロでしかなかったかもしれない。
そんな二人が「もしも二人で逃げていたら」なんて話をするなんて、不毛以外の何物でもない。しかしそれが、少なくとも「ぼく」にとって「救い」になった。
イレーヌの死で、今度こそ彼女を永遠に失った「ぼく」は、今までの人生と決別することを決意する。まるでその作り話こそが、本当の彼の人生だというように。

美しいけれど、内容が薄いなぁ、と思いました。
自分勝手に生きてきた女が、未練たらたらの男を利用しただけ、と言ってしまえば身もふたもないけど、男と女って、そんなもんかもしれないし。



ところで、
作者シュリンクは、ゲルハルト・リヒターの「エマ、階段を下りるヌード」にインスピレーションを受けてこの作品を書いたそうだ。

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ついでにシュヴィントは、「マルセル・デュシャンの『階段を下りる裸体』に対する反論として、この絵を描いた」と書かれている。

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階段を降りる裸体 No.2 / Nude Descending A Staircase, No. 2


「階段をおりる」ことは、夢占いだと、過去に戻りたいとか心身の不調を表していることが多いらしいのですが、

この作品も、「あのときああしていれば」という想いが、主題なんでしょうね。

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W.G.ゼーバルト『アウステルリッツ』

今回の旅行のテーマとなった小説について紹介します。

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アウステルリッツ改訳 [ W.G.ゼーバルト ]
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1960年代の後半、語り手である「私」がベルギーを旅行中、アントワープ中央駅の待合室で、一風変わった風貌の男性と出会う。彼はアウステルリッツと名乗り、建築史が専門の学者であり、駅の由来などを語ってくれた。
翌日もブリュッセルの最高裁判所の前で出会う。
私は、アウステルリッツが勧めたブレーンドンク要塞跡を訪ねるが、そこはナチス時代、強制収容所としても使われたところだった。

その後もたまに連絡を取り合うような関係だったが、ある日「私」に自分の生い立ちを話し出した。

彼は幼少のころの記憶がなく、「ダーフィト・エリアス」という名でイギリスで育ったが、進学のときに自分が養子で、本当の名が「ジャック・アウステルリッツ」ということを知らされた。
そして何年かして、ラジオから流れてきたニュースがきっかけで、自分が戦争当時、「子どもの移送」プロジェクトでプラハからこちらに送られてきたユダヤ人だということがわかった。

自分のルーツを探るべくプラハに飛ぶと、幸運なことに当時親しくしていた隣家の女性が今もその場所に住んでいた。
彼女によると、彼の父はユダヤ人が狙われ始めた時期にパリに亡命、舞台女優だった母は子どもの自分を逃した後テレジン収容所に送られ、その後消息不明だという。
アウステルリッツは、両親の足跡を求めて、ニュルンベルク、パリ、テレジンを旅する。

その後何年も音信が途絶えたが、ある日「私」あてに手紙が来る。

パリに移り、結婚も意識した恋人も出来たが、結局ダメだった。記憶喪失になるほど衰弱してしまったが、元恋人の介抱で回復しつつある。
父がパリからスペインへ向かったかもしれないので、自分もオーステルリッツ駅から電車に乗るつもりだ。

「私」は、これが本当の別れだと悟り、再びブレーンドンク要塞を訪ねる。


初めて読んだとき衝撃を受けましたね。
まず、文章に埋め込まれた写真の数々。ゼーバルトの作品の特徴ですが、写真やイラストを文章と組み合わせていて、そのエピソードに対応して膨大な蘊蓄が投入されているので、その博学ぶりに幻惑されるという・・・。
とくに冒頭のブレーンドンク要塞は、この作品を呼んだのは10年以上前のことなんですが、いつか絶対に行ってやる、と誓ったくらい印象深いものでしたね。

それから、擬古文調とでもいうのか、たゆたうような鈴木仁子氏の美しい翻訳。
原文は、間接話法を多用した、改行もないような訳しづらい文章なんですが、硬質でありながらしっとりした感じもあり、よくこんな訳できるよなと思いますよ。


『アウステルリッツ』に出てくる場所で行けたところは、
アントワープ中央駅
アントワープ動物園
ブリュッセル・最高裁判所
ブレーンドンク要塞

です。後日、この「聖地巡礼」について書ければいいなと思います。

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カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』感想

『日の名残り』『わたしを離さないで』(←今ドラマでやっていますね)のカズオ・イシグロの十年ぶりの長篇!

忘れられた巨人 [ カズオ・イシグロ ]

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舞台は、アーサー王の死後、土着のブリトン人と海を渡って島の外から来たサクソン人が共存しているブリテン島。世界は霧に覆われ、人々は記憶を長くとどめることができなかった。

ブリトン人のアクセルとベアトリスの老夫婦は、遠い地で暮らす息子に会うため、長年暮らした村を後にする。昔のことが思い出せないまま。

一晩泊めてもらおうと寄ったサクソン人の村では、少年が悪鬼に攫われて大騒ぎしている最中だった。同じく村に立ち寄っていた戦士ウィスタンの活躍で少年エドウィンは救出されたが、その腹には傷ができていた。

「悪鬼に噛まれた者は、そのうち悪鬼になる」と村中が怯える中、老夫婦は村の長老から少年を連れ出してほしいと頼まれる。ウィスタンもそれに賛成だと言い、途中まで同行すると申し出る。

山の中の修道院にいるジョナス医師にベアトリスを診てもらおうと、そちらに向かう途中、アーサー王の甥である老騎士ガウェイン卿に出会う。彼の旅の目的は、雌竜クエリグを退治することだが、実はウィスタンのそれも同じだった。


老夫婦は修道院でジョナス医師に会い、記憶を奪う霧の正体がクエリグの吐く息であると教えてもらう。その夜、一行はウィスタンを追うブレヌス卿に襲撃される。ガウェイン卿に助けられ、エドウィンとともに逃げ出すが、エドウィンはウィスタンを助けに戻ってしまう。


アクセルとベアトリスは、「親を連れていかれた」という女の子から託されて、毒草を食べて育った山羊を連れて、クエリグのいる山に向かっていた。竜に山羊を食べさせて倒そうというのだ。

そこへウィストンとエドウィン、そしてガウェイン卿も現れる。巣穴にいたのは痩せ衰えた竜の姿だった。竜退治と偽って、じつは竜を守ろうとしていたガウェイン卿を倒し、ウィストンが竜にとどめを刺す。


そのときウィストンは理解する。アーサー王の命で魔術師マーリンが竜の息に記憶を奪う魔法をかけたのは、ブリトン人とサクソン人の間に横たわる憎悪と復讐の意志を忘却の彼方に追いやり、平和な世を築くためだった。そのため、ガウェイン卿は竜を守ろうとしたのだと。その竜が倒された今、2つの民族の間に戦いが始まる――。
「かつて地中に葬られ、忘れられていた巨人が動き出します。」

アクセルとベアトリスはウィストンたちと別れ、旅を続ける。霧が晴れ始めた今、アクセルは昔の記憶を―息子がもう死んでいることを思い出す。ベアトリスは「息子はこの近くの島に住んでいる」と言い出し、船頭に向こうへ渡してくれと頼み――。


『日の名残り』が英国執事が出てくる純文学、『私を離さないで』がSF路線で、今度は剣と魔法の世界。
ちょっとびっくりしましたが、イシグロ氏がインタビューの中でこの作品を書いたきっかけについて、1990年代のユーゴスラビア解体に伴って発生した戦争だと語ったという記事を読んで、腑に落ちました。

ボスニアやコソボでは、セルビア人もクロアチア人もムスリムも、異民族が混じりあって生活してしましたが、第2次世界大戦のころは、「民族独立」の名のもとに他民族を憎むように教え込まれてしました。

戦後、共存しているように見えたのは、「共産主義体制」という霧に覆われていただけだったことが、ベルリンの壁崩壊後の、バルカン紛争勃発でわかりました。
こういった問題を生々しくなく描くにはどうしたらいいか。

その答えがファンタジーだったというわけですね。

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フランツ=オリヴィエ・ジズベール著『105歳の料理人ローズの愛と笑いと復讐』

いみじくも作中人物が言ったように、「みんな100歳老人の話なら何でも好きだもの」。最近元気な高齢者が主人公という物語が流行っていますね。
やっぱりこの激動の20世紀の出来事に絡ませることができるし、100歳まで元気に生きている人は、最近珍しくないから・・・。


自伝を書き始めたローズは1通の訃報を受け取る。その人、レナーテ・フルルなる女性に、ローズは心当たりがあった・・・。近所の少年に頼んで、その女性のことを調べてもらう。

1915年、黒海沿岸で生まれたローズは、8歳のときアルメニア人大虐殺で家族を皆殺しにされ、トルコのベイ(長官)に献上される。美しく成長したローズは、大商人に売られ、船でマルセイユへ。
マルセイユに到着後、船から逃げ出し、農民のランプール夫妻に保護される。
しかし幸福も長くは続かなかった。13歳のとき、夫妻が相次いで死に、ローズの後見人として農場に乗り込んできた甥の夫婦に奴隷のようにこき使われた。

羊の去勢の仕事で農場を訪れたガブリエルと運命的に出会い、駆け落ちしてパリへ。
祖母やランプール夫人に教わった料理をもとにレストランを開き、二人の子供にも恵まれた。
しかし自分を不幸のどん底に落とした人物たちへの復讐の想いやまず、旅行と称して出かけては、人知れず始末してきた。

1930年代、フランスでも反ユダヤの機運が高まっていた。ガブリエルは、論敵ラヴィスに、自分でも知らなかったユダヤ人だという出自を暴き立てられた。
また、ローズの浮気がばれたことにより、ガブリエルは子どもたちを連れてローズのもとを去った。

1940年、パリはナチス・ドイツの占領下にあった。そしてどういうわけだか、ナチス高官のハインリヒ・ヒムラーがローズの店を訪れた。
ローズの金髪碧眼の美貌と料理の腕、そして彼女のつくる活力の出る錠剤に惚れ込んだヒムラーは、自分のもとに来るように誘う。

1942年7月、パリではユダヤ人が一斉検挙され、ガブリエルと子供たちも冬季競輪場に連行された。彼らを助け出そうと、ヒムラーと連絡を取り、ローズはベルリンへ降り立った。
調査の間、ローズは「料理人」としてヒムラーのもとで暮らすことになったが、ヒムラーは手を出してくることはなかった。

そのうち軍の仕事を任されるようになり、ヒトラーのディナーを作りにベルヒテスガルテンに呼び出されることになった。
ローズの料理を総統は気に入ったが、その夜、酔わされたローズは何者かに乱暴された。
数か月後、ローズは自分が妊娠していることに気づく。ヒムラーの計らいで、生まれた女の子は「レーベンスボルン」に預けられた。そしてローズはパリに戻された。
調査の結果、やはりレナーテ・フルルは、このとき生まれた娘だったことがわかる。

夫と子供の死を知り、ラヴィスに復讐したローズは、アメリカに高跳びする。アメリカ人のフランキーと結婚したが、数年後、2度目の夫は心臓発作で死亡した。

1955年、パリ時代に知り合ったサルトルとボーヴォワールに
誘われ、中国へ。そこで12歳年下の柳と出会い、結婚する。しかし毛沢東と鄧小平の権力争いの最中、1968年に殺された。
再びマルセイユに戻ったローズは、マリ人の女の子カディと同棲する。そしてカディが生んだ娘と暮らして、現代にいたる。

今日はローズの誕生日。お祝いをしに、みんなが集まってくる・・・。

過激なオバアちゃんだな~。
105歳になった今でも厨房に立ち、出会い系サイトで相手を物色したり、拳銃でチンピラを脅したりしてるし。

「窓から逃げた100歳老人」でもそうでしたが、この手の話の主人公って、中国に行って世界一周して帰ってきますね。
特にフランスでは、1950年代にサルトルをはじめとする知識人がこぞって共産主義に走ったことから、この20世紀を語るうえではずせないトレンドなのでしょう。

原題は『 La cuisiniere d'Himmler (ヒムラーの料理女)』。日本版では、「愛と笑いと復讐の力を信じてる」というプロローグの中の言葉をクローズアップしていますね。(題名で全部説明しようって感じで、あまりセンスを感じないけど。)

ついでにドイツ版はというと、『Ein Diktator zum Dessert(独裁者にデザートを)』


切り口によって、同じ物語なのに印象が違うのが面白いですね。
ちなみにローズがヒトラーのためにつくったデザートは、リンゴのタルトでした。

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ハラルト・ギルバース著『ゲルマニア』

今まで、ナチス・ドイツ時代のことを取り上げた作品は、おおむねドイツの戦争責任や、ホロコーストを扱っていましたが、ここ最近、違う角度から取り上げている作品が増えている印象を受けます。それも、エンターテインメントとして。


「1944年ベルリン。ユダヤ人の元敏腕刑事オッペンハイマーは突然ナチス親衛隊に連行され、女性の猟奇殺人事件の捜査を命じられる。断れば即ち死、だがもし事件を解決したとしても命の保証はない。これは賭けだ。彼は決意を胸に、捜査へ乗り出した…。連日の空襲、ナチの恐怖政治。すべてが異常なこの街で、オッペンハイマーは生き延びる道を見つけられるのか?ドイツ推理作家協会賞新人賞受賞作。」
(Amazon.jpより)

…この話、ナチス・ドイツ時代でやる必要があったか?というのが正直な感想。
レーベンスボルン「生命の泉」やサロン・キティ・・・この時代きってのスキャンダラスなネタではあるが、本筋とはあまり関係なし。取って付けた感がありましたね。

連日の空襲、ノルマンディーに連合軍が上陸する、という戦況にあって、ナチス高官の命令とはいえ、猟奇殺人事件を捜査させる、というのがなんとも不合理というか。ゲッペルス自ら「この事件を解決せよ。」とユダヤ人に命を下す、というのがなんとも・・・。

そこまでして捜査させる事件が、どれほどのナチスの秘密や陰謀に絡んでいるのかと思いきや、その辺の説明は一切なし。

読者にしてみれば、消化不良というか、設定を活かしきれていない、という印象でしたね。

ただ、ユダヤ人警部とSS将校の関係というか「バディ」要素が、一部の婦女子の間で注目されているようですよ(笑)。

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『しろくまミルク』

あのミルク姫の本、ふたたび!
生まれ育った男鹿水族館GAOから、釧路市動物園に旅立ったホッキョクグマの女の子「ミルク」。
釧路市動物園はブログとかGAOほど熱心にはやっていないようなので、あまりその後の様子を知ることはありませんでしたが、なんだ、元気にやっているじゃないの~。


まるで中に人が入っているかのような美しい立ち姿や、ポリタンクや筒を使って多彩に遊ぶミルク。それがテレビやネットで話題となり、今回の書籍化につながったようです。

いつも真っ白で「黒クマ」になっている写真がないわ~と思ったら、釧路にはチップがないみたいですね。
写真にそれぞれ、ミルクの独り言のような吹き出しがついています。まあこれはなくてもよかったかな。

久しぶりに釧路市動物園のHPを見にいったら、「ミルクが三角コーンを食いちぎってケガするところだったので、この先使用を中止します」とのニュースが。

姫・・・元気なのにもほどがあります。


ところで、この釧路市動物園にはメスの「ツヨシ」もいます。2003年生まれということなので、今12歳。早くお婿さんを見つけて、子どもを産んで、ってしなきゃならないのに・・・。

一方、ヨーロッパでは男余りの状態。
これってどうにかならないんでしょうかね~。

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永野護『ファイブスター物語』第13巻感想

ファイブスターストーリーズ FSSが連載再開して、 「MH」→「GTM」に、「ファティマ」が「オートマティックフラワーズ」に・・・など、設定とか名称が大幅に変わったとか、ロボットのデザインが物凄くかっこ悪くなったとか、いろいろネットの感想を見かけ、どんなものかと単行本が出るのを楽しみにしていましたが、


基本的には休載前の続きだし、キャラクターも人格変わったわけでなし、普通に物語の世界に入り込めましたね。


リブートのあとがきとかで、作者がデザインについて挑発的なことを書いていた「アシリア・セパレート」も、複数のGTMを、遠隔操作で動かせる端末(光学インジェクター)のついたファティマスーツになったんだな~、より実戦的なスタイルになったんだな~、と思ったくらいで。

なぜバルーンパンツなのか、そこは問い詰めたい気もしますが。普通にショートパンツでいいじゃん。

ロリータ通り越して、幼児くさい。



新設定の名称には、ドイツ語由来のものが多いですね。 ディー・カイゼリン(女帝)とか、カンプフグルッペ(戦闘集団)とか。


≪あらすじ≫

ファティマ・エストのメンテナンスに伴い、ミース・バランシェのもとに各地のファティマ・ガーラント(旧設定では「ファティマ・マイト」)が集まる。

とはいえ、皆の目的は、カイエンの死によって「壊れて」しまったファティマ・アウクソーをどうやって直すかということ。そこに予期せぬ人物が訪ねてくる。


バッハトマの侵攻で分断されたハスハの地。 フィルモア皇帝ダイ・グが「詩女」(旧:アトールの巫女)のフンフトに会いに、聖宮ラーンを訪れる。目的は詩女を妃とするため。 フィルモア帝国のあるカラミティ星が遠からず滅することを受けて、帝国の民をハスハの地に移住させる。そのためにフィルモア初代皇帝と詩女ラーンの伝説を利用し、ハスハへの移民を抵抗なく受け入れてもらおう、というものだった。
密かに慕うダイ・グの結婚話に動揺するクリスティンに、フンフトは「皇帝と同じ苦しみを背負い、同じ道を歩んで」と励ます。


コールドスリープ状態に陥ったマグダルを連れて、ヘアードは聖宮ラーンを目指したが、保身に走った神官たちから門前払いを受ける。しかしフンフトから、マグダルをを守るために身を隠すように指示を受け、ミラージュ騎士のランドアンド・スパコーンとともに逃避行を続ける。 ところが戦闘に巻き込まれ、マグダルは行方不明に・・・・。



その頃、難民が押し寄せるベラ国の空港に「レディオス・ソープとその妻ファナ」なる、世にも場違いなカップルが現れる。ソープは、その場を指揮していたAP騎士団ツラック隊の支隊長ナルミに、自分はGTMスライダー(旧:マイスター)であると明かし、GTMの修理を申し出る。


新キャラもバンバン出て、物語が動き出した第13巻。

ジークボゥの父親は誰?とか伏線はりまくりで続きが楽しみですが、第14巻が出るのは、何年先なんでしょうね・・・。

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フェルディナント・フォン・シーラッハ著『禁忌』感想

「ドイツ名家の御曹司ゼバスティアンは、文字のひとつひとつに色を感じる共感覚の持ち主だった。ベルリンにアトリエを構え写真家として大成功をおさめるが、ある日、若い女性を誘拐したとして緊急逮捕されてしまう。捜査官に強要され殺害を自供し、殺人容疑で起訴されたゼバスティアンを弁護するため、敏腕弁護士ビーグラーが法廷に立つ。はたして、彼は有罪か無罪か――。刑事事件専門の弁護士として活躍する著者が暴きだした、芸術と人間の本質、そして法律の陥穽。2012年本屋大賞翻訳小説部門第一位『犯罪』の著者が「罪とは何か」を問いかけた新たなる傑作。著者による日本版オリジナルエッセイ「日本の読者のみなさんへ」を収録。」(東京創元社の紹介ページより引用)
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488010409

「シーラッハの今度の小説は、2度読んでもわからなかった」Den neuen Roman Ferdinand von Schirachs habe ich nicht verstanden, selbst nach zweimaliger Lektüre nicht.とドイツの有力紙ZEITの書評でも書かれてましたが、私もわからなかった。

本作は4章で成り立っていて、ゼバスティアンの半生を語る「緑」、ここで子供のころ父親が自殺したことが語られる。
殺人の容疑で取り調べを受ける「赤」、
法廷で全てが明らかにされる「青」、
後日談の「白」。

心身のバランスを崩し療養中だったビーグラー弁護士は、ゼバスティアンに指名されて弁護を引き受ける。「殺人犯ではない前提で弁護して欲しい」「!?」。

結局、「自供は拷問を受けてなされたもの」という線で攻めていこうとする。

事件について調べてみると、被害者とされる若い女性は自殺した父の隠し子、ゼバスティアンの妹だということがDNA鑑定で判明する。しかし、彼女は生きていた。


ではあの被害者とされている女性の写真は、いったい誰を写したものなのか。

ヒントは、作中のエピソードだ。
19世紀にゴルトンという人が、「悪人には口とか鼻とかに何か異常な特徴があるはずだ」と考え、ロンドンの刑務所で、囚人の顔を1枚の原板に多重露出撮影したところ、別にそんなものはなかった。それどころか美しいとさえ言えた。

それと、表紙の女性の写真。よくよく見れば違和感を感じるはずだ。

しかし、ゼバスティアンは何をしたかったのか。
下手すれば、売名行為と言われても仕方ないことなんですが。


あと、ゼバスティアンが「共感覚」の持ち主、という設定がほとんど生かされていないような気がするのだが、読み方が悪いのだろうか・・・。

ところで、いったい何が「禁忌」なのか。シーラッハが日本の読者に向けたあとがきを読む限り、悪の本質について追及することが本作のテーマのようですが・・・・。

http://www.zeit.de/2013/37/roman-ferdinand-von-schirach-tabu

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